太陽光発電を利用して輸送機関を改善できないか、これもHermans氏の検討課題の1つだ。同氏の前提条件は、他のエネルギー源を使わずに晴天下で走行(飛行)できるかというもの。
飛行機については否定的な意見を示した。同氏の試算はこうだ。「太陽光の放射強度が最大の場合、1平方メートル(1m2)当たり1キロワット(kW)だ。ボーイング747の翼面積は555m2。太陽電池の変換効率が20%の場合、最大で110kWの出力が得られる。ところが、同機のエンジンは約100MWの出力を備える。つまり太陽電池の出力はエンジンより3桁も少ない」。
同氏は飛行機の概念に革命的な変化があったときにかぎり、太陽電池飛行機が可能になると結論付けた*5)。
*5) 乗員の数を制限したり、短い飛行時間ですむ場合には太陽電池飛行機も実現可能だ(関連記事1、関連記事2)。
太陽光発電だけを用いて走行する自動車の可能性はどうだろうか。
Hermans氏の結論はこうだ。快適性を追求するなら、雲一つない晴天の元でも、太陽光発電で得た電力だけを直接用いて走行することは困難だという。
なぜ快適性に言及するのだろうか。快適性を求めないなら、実現可能だからだ。オランダのアイントホーフェン工科大学の学生チームが開発した4人乗りの「Stella Lux」を取り上げている(図3、図4)。
Stella Luxは効率97%、出力1.5kWの電動モーターを利用して走行。太陽光が十分に得られるなら時速約43kmを維持できる*6)。最高速度は時速125km。
課題は空気抵抗を下げるために車高が1.12mしかないことだ。快適性を求めないなら太陽光だけで走行するファミリーカーを実現できることになる。
*6) Stella Luxは容量15kWhのリチウムイオン蓄電池を搭載しており、晴天の日中には走行距離が1000kmにも達する。夜間に限れば約650kmだ。
Hermans氏は液体水素や蓄電池、太陽光などさまざまな代替手段について検討している。航空機は液体水素、自動車は蓄電池(と一部太陽光)が適するという結論だ。
だが、エネルギーの使用量を減らすもっと効率のよい方法もあるという。そもそも移動しないことだ。
例えば職場と家庭の距離を短くすることで実現できる。同氏は代替エネルギーの開発にも増して、都市計画が重要な鍵となると結論づけた。
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