次世代バイオガソリン、食糧と競合しないバイオマスから生成に成功自然エネルギー

昭和シェル石油は食糧と競合しないバイオマス原料から、ガソリン基材などに利用可能な有機化合物の製造に成功。2025年までに実用化する方針だ。

» 2017年12月14日 09時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 昭和シェル石油は、東北大学の研究グループとの共同研究により、食糧と競合しないバイオマス原料から、ガソリン基材として利用可能なヘキセンの生成に成功したとこのほど発表した。量産技術を2025年までに確立し、温暖化対策への貢献を目指す。ヘキセンはジェット燃料相当の炭化水素に変換可能なことから、ジェット燃料基材の製造にも展開する予定だ。

 同社はこれまで、食糧と競合しない草本系および木質系バイオマスを原料とした次世代バイオ燃料を製造できる触媒の開発を、東北大学と共同で行ってきた。

Pt-Ir-ReOx/SiO2触媒 出典:昭和シェル石油

 同社の研究開発の特徴は、食糧と競合しないバイオマス由来のセルロース、もしくはそれらを糖化/水素化処理して得られるソルビトールを原料として、東北大学が開発した「Ir-ReOx/SiO2触媒」もしくは同大学との共同研究により開発した「Pt-Ir-ReOx/SiO2触媒」を用い、原料中のC-O結合を、水素を用いて選択的に分解しヘキサノールを製造するところにある。この生成したヘキサノールを「H-ZSM-5触媒」を用いて脱水反応させると、ガソリン基材として利用可能なヘキセンが得られる。

 他の次世代バイオ燃料製造技術と比べると、反応温度を抑え、エネルギー投入量を減らすことができる可能性があるという。さらに反応工程が少ないため、用いる水素量の低減が可能であり、反応速度が高いなどのメリットもあるとしている。

研究開発のイメージ 出典:昭和シェル石油

 共同研究により開発したPt-Ir-ReOx/SiO2触媒は、原料のソルビトールから直接水素を取り出しての利用が可能だ。同社は、反応に用いる水素で、ソルビトール由来の水素を一部使用することで、従来の石油由来のガソリンと比較して、温室効果ガスの削減効果が50%以上のバイオ燃料の研究開発に取り組んでいる。

 ラボレベルでの実験により、セルロース(0.5グラム)を原料に、Ir-ReOx/SiO2触媒でヘキサノールの生成(収率60%)に成功。また、H-ZSM-5触媒を用いてヘキサノールの脱水反応によるヘキセンの生成(収率79.8%)に成功したという。

 ヘキセンは石油由来のガソリン中に存在する成分。今回生成したヘキセンを夏季および冬季の代表的なガソリンへの混合可能量をJIS規格に照らして調査したところ、夏季は約22vol%、冬季は約7vol%混合可能であることを確認したとしている。日本ではバイオエタノールのガソリンへの混合率は、JIS規格で3vol%が上限(E10対応ガソリン車は10vol%)となっているため、バイオエタノールに比べ、より多くガソリンに混合できるという利点がある。

 現在はラボレベルにて同触媒変換技術のプロセスを開発中だ。今後は段階的なスケールアップを経て、2025年までに技術の確立を目指すとしている。

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