セカンダリー案件について、判断が難しいのが、「発電所を適切な状態に戻すために、いくらの費用をかけるのか?」という問題です、テクニカルデューデリジェンスの費用だけでなく、落ちてしまった発電能力を100%、またはそれに近い発電能力に戻す「リパワリング」の場合は、さらに少なくない費用がかかります。場合によっては、システム自体を構成するモジュールやケーブル、パワーコンディショナーを全て更新する必要もあります。
こうした費用をかけても、以前より収益性が高まり、追加費用の投資回収が行えれば問題ありません。しかし実際には、状態が悪化した発電所を“元の状態に戻す”ケースがほとんどです。リパワリングなどのさらなる追加費用を投じて、それを回収できるレベルの利益率(=発電効率)を実現できるかは、非常に難しい判断です。
将来のセカンダリー市場とともに健全な太陽光発電市場の実現に向け、こうした現在の状況を改善する手法の1つに、国や機関などが発電所の品質や運用に関するガイドラインを策定し、それに沿った運用や評価が行える技術者や企業を認定するという方法が挙げられるのではないでしょうか。
現在、電気安全環境研究(JET)も「JET保守点検技術認定制度」を策定し、太陽光発電協会(JEPA)が「太陽光発電事業の評価ガイド」を公表しています。こうした評価ガイドとともに、実際にきちんと評価ができる会社や技術者を登録し、発電所自体の評価を公表する動きをさらに広めていくべきだと考えています。
海外では発電所の認証は当たり前です。有名なものとして、テュフ・ラインランドが実施している認証制度が挙げられます。投資の観点からみれば、テュフの認証を取得している発電所であれば、転売時に銀行などからの融資を受けやすいメリットがあります。当初から発電所の転売を想定している場合、こうした認証を取得しておく利点は大きいでしょう。
今後は日本でも、このように客観的に判断でき、発電量を中正、公正に判断できる認証制度の普及が望まれます。海外では当たり前ですが、マルやバツをつけるだけの評価ではなく、点数化し、誰もが分かる客観的な評価基準が必要だと感じています。
セカンダリー市場に関して、発電所オーナーが現在事業資金をローンで銀行から借りている場合、これまでの売電額と償却、税金などを考慮して、転売しても損にならないと判断する時期は、稼働開始から7〜8年後になると見ています。つまり、2012年からFITがスタートした日本の場合、あと数年程度でセカンダリー市場が活性化するでしょう。
その場合、今後ますますデューデリジェンスやリパワリングの重要性が増すと考えられます。きちんとデューデリジェンスをして、第三者機関の証明がついているものが高値で売れ、そういった評価付きの物件を扱っている企業に良い発電所の売り手と買い手がついてくるーーこうした未来はそう遠くないでしょう。
今転売を考えていない発電所オーナーの方も、今の段階でデューデリジェンスを行い、O&Mをしっかりと行わないと、将来転売を検討したときには、市場から見向きもされなくなっているーーこうした可能性も十分に考えられます。
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