独自のP2P基盤で“再エネと企業をつなぐ”、みんな電力が描く新たな電力流通の在り方とは?自然エネルギー(1/3 ページ)

「顔の見える電力」を追求しつづる新電力ベンチャー、みんな電力。同社独自のブロックチェーンを活用した電力P2P取引基盤によって可能になる、発電所を選んで買い、需要家を選んで売るという、新しい電力取引のスタイルが創出するものとは――。そのビジョンを大石英司社長に聞いた。

» 2019年11月18日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

 みんな電力は、創業当初から「顔の見える電力」を理念に掲げ、発電事業者と電力需要家の“つながり”を重視した電力供給サービスに取り組んできた。今日、多方面から注目を集めるP2P(PtoP)電力取引を、創業時から目指していたといって良い。

 P2P電力取引とは、発電所と需要家を相互に特定した電力取引を意味する。ブロックチェーン技術を活用することで、発電に関する情報と電力消費に関する情報をひも付けることが可能となり、近年これを使った電力取引システムの構築が競われている。

 みんな電力は、2018年12月に他社に先駆けてブロックチェーンP2P電力取引の商用化を実現。2019年4月からは、法人向けサービス「ENECT RE100プラン」として本格展開している。さらに、2019年11月から、一般家庭の卒FIT電気を買い取り、特定の企業・団体に供給する新サービスを開始した。

発電所を特定できる、“産地証明付き”の電力を

――みんな電力は、以前から「顔の見える電力」というコンセプトを掲げていますが、現在のサービスとは何が違っていたのでしょうか。

みんな電力の大石英司社長

大石氏 2011年の設立以来、みんな電力は「顔の見える電力」をコンセプトに、電気を「使う人」と「つくる人」をつなげる取り組みを進めてきました。野菜のように、消費者が生産者を選べる電力供給サービスを一貫して追求してきたのです。

 ただ、従来の技術では、特定の発電所の発電量と特定の需要家の電力消費量を厳密にマッチングさせることは困難でした。そのため、はじめは「発電所を選んで応援する」という形でやっていました。お客様が発電所を選ぶと、電気料金の一部が応援金となり、電気の生産者に還元されるという仕組みです。そして、応援された発電所から返礼品が届けられるという、いわば “電気版ふるさと納税”のようなものでした。

――今行っている日本初の電力供給サービスとは、どのようなものですか。

大石氏 みんな電力は2018年、ブロックチェーンを活用した独自の電力流通プラットフォーム「ENECTION2.0」を開発し、日本で初めてP2P電力取引の商用化を実現しました。これは私たちにとって自然な流れであり、会社設立当初から追及してきた「顔の見える電力」を、最新のブロックチェーン技術を使って、より厳密にマッチングさせるサービスに進化させたものなのです。

「ENECTION2.0」による電力のP2P取引のイメージ 出典:みんな電力

 具体的には、個々の発電量と需要量を30分ごとにマッチングし、取引として約定させるもので、約定結果はブロックチェーンで記録されるため「どの電源から、どれだけ電気を買ったか」の証明ができます。つまり、特定の電源(発電所)を指定して電力供給を受けることが可能になったのです。

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