期待の次世代太陽電池市場、2030年に4500億円規模にまで成長か太陽光

調査会社の富士経済がペロブスカイト(PSC)、色素増感(DSC)、有機薄膜(OPV)、ヒ化ガリウム(GsAs)といった新型・次世代太陽電池の世界市場に関する調査結果を発表。2019年の新型・次世代太陽電池の世界市場規模は6億円だが、2030年には4563億円にまで拡大すると予測している。

» 2020年03月12日 07時30分 公開
[スマートジャパン]

 調査会社の富士経済は2020年3月、ペロブスカイト(PSC)、色素増感(DSC)、有機薄膜(OPV)、ヒ化ガリウム(GsAs)といった新型・次世代太陽電池の世界市場に関する調査結果を発表した。2019年の新型・次世代太陽電池の世界市場規模は6億円だが、2030年には4563億円にまで拡大すると予測している。

 2019年の既存太陽電池(結晶シリコン、CIS/CIGS、CdTeなど)市場は4兆1730億円で、これと比較すると6億円程度の新型・次世代太陽電池市場は非常に小さい。今後、既存太陽電池の代替をするには、製造コストが20/WW台へと突入した結晶シリコン太陽電池や、より安価なコスト目標を掲げるCdTe太陽電池との競合は避けられないため、価格競争力の向上が重要となると指摘している。

各太陽電池の今後の見通しは?

 色素増感は発電性能や耐久性についての研究開発が有機薄膜より先行しており、10年程前にはに商用化されていたものの、核となる用途開拓が進んでいなかった。しかし、昨今のIoT化の進展によって通信・センサー用電源として採用が進みはじめている。IoTデバイスの全てに太陽電池が導入されることはなく、蓄電池やその他環境発電と競合するが、屋内外の両方で使用可能であり、一定の光量があれば常時発電可能、発電性能が高いといった色素増感の特性により、今後の伸びが期待できるとしている。

 有機薄膜は日本では大手化学メーカーが実用化を目指し研究開発を進めている段階だが、世界的には既に商用化しているメーカーも多く、主に建材一体型太陽電池として採用が進んでいる。結晶シリコン太陽電池をはじめとする既存太陽電池と競合するが、半透明でも一定の発電量が得られ既存太陽電池では不向きな壁面設置が可能なことや、高温/高緯度地域に適しているなどの優位性が発揮されることで、世界的に普及が進むと予想している。

 ペロブスカイトは既存太陽電池の主流である結晶シリコン太陽電池の発電性能を上回るとの期待から研究開発に乗り出すメーカーは急増しており、中でも中国と欧州のメーカーが先行している。2020年から商用化が進むとみられるものの、耐久性と毒性の高い鉛の使用に関する課題があり、短期的に量産・量販が可能になるとは考えにくいが、課題解決の進展次第では想定を上回るスピードで普及する可能性もあるとした。

 ヒ化ガリウムは人工衛星など宇宙用の他、砂漠・乾燥地に導入する集光型太陽光発電システムで40年以上使用されている。製造工程が複雑で高コストであり、かつ有害物質を使用するため、2019年は商用販売は見受けられなかったが、変換効率が各種太陽電池の中で最高水準であり、面積当たりの出力が大きいため自動車や、UAV(無人航空機)などの移動体への導入に向くため、市場拡大が期待されるとしている。

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