次に「地消」については、「地産」の課題を解決する必要があるが、それ以外では地域内の中小企業を重要顧客としたマーケティングを強化すべきと考える。脱炭素化に向けた動きは、既に国や投資家からのプレッシャーを大きく受ける大手企業を中心に進んでいるが、現在はサプライチェーン全体でのCO2排出量の定量化や、削減に向けた下請け企業との協業方針などを、大手企業としても統合報告書などで公表することが求められている。
つまり、下請け企業である中小企業も脱炭素経営に着手しなければ、大手企業との取引を失う可能性があり、逆にいうといち早く温室効果ガス削減に向けて動き出すことで、取引維持や新規顧客獲得にもつながるというのが、今の中小企業の現状と考える。既に危機意識の高い中小企業は、SBT(Science Based Targets)認定(パリ協定の基準に準拠した温室効果ガス削減目標を企業として設定、認定を受けるもの)を取得するなどして、脱炭素経営を進めており、特に大手企業との取引がある企業や、海外取引のある中小企業を中心に、この取り組みは加速すると考えられる。
また、顧客拡大に向けては地域内の企業とリレーションを持つ地方銀行との連携も必要ではないだろうか。地方銀行は地域脱炭素社会の実現に向けたキープレーヤーとして政府からの期待もあり、地産地消型VPPのような取り組みは、銀行自身の脱炭素メニューとして取り込みたいと考えているはずである。
今年2021年11月に「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)」を控えていることから、特に国や政策面での脱炭素の勢いは今後さらに強まると考えられ、地産地消型のVPPモデルへの期待も大きい。この中心的役割を担う地域新電力のさらなる成長に向けては、前述の通り、まず「地産」の課題を解決する必要があるが、このためには域外との連携や、EV・蓄電池・デマンドリスポンスなど、多種多様のソースを束ねながら瞬時に需給を一致させていく必要があり、これらをつなぐセンサーやIoT、AIによる解析などのテクノロジーの導入が必須である。
次回の第3回では、本稿でもその一部を紹介した、地産地消型VPPにおいて導入が期待される先進的なビジネスモデルやテクノロジーについて紹介したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.