究極の脱炭素コミュニティへ――再エネ融通で電力自給率60%超の新街区がさいたま市に太陽光(2/3 ページ)

» 2022年01月07日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

変動制料金メニューとハイブリッド給湯器で電力需要を調整

 コミュニティ内の再エネ自給率を高めるためには、供給側が需要に合わせるだけでなく、需要側が供給に合わせていくことも重要だ。Looopでは、そのための手法として、みその再エネ電気にダイナミックプライシング料金メニューを採用した。街区内の太陽光発電の余剰予測に合わせて、供給する電気の従量料金単価を1kWh当たり20円、25円、30円と3段階に変動させるというものだ。

 具体的には、太陽光の発量予測や需要予測などをもとに太陽光発電の余剰を予測し、これをもとに翌日の料金単価を決め、各家庭に貸与した専用デバイス(スマートホームデバイス)に表示する。電力が不足する時間帯には使用を控え、余っている時間帯に多く使ってもらえるよう、料金単価を通して、顧客の行動変容を促進しようという考えだ。

各家庭に貸与されるスマートホームデバイス

 また、各戸に設置されたハイブリッド給湯器にも、需要を調整する役割が期待されている。ハイブリッド給湯器は、ガスでも電気でもお湯をつくることができる給湯器(ここではリンナイの「ECOONE」が採用されている)。太陽光発電の余剰が発生するタイミングでお湯をたき上げることで、発電した電力をより効率よく使うことができる。

 もちろん、状況に応じてガス炊きも可能だ。激甚(げきじん)災害により系統が停電して、街区内の電源だけで電力供給を続けなければならないときなど、ガスを使えるというメリットは大きい。ハイブリッド給湯器の制御は、街区全体の電力需給バランスをみながら、通信コントローラー経由でLooopが行う。再エネ利用の最大化と、レジリエンスに寄与する仕組みといえるだろう。

EVを蓄電池としても、地域のシェアカーとしても活用

 EVの組み入れ方も、スマートホーム・コミュニティ街区の特長となっている。前述の通り、ここではEV2台の大容量バッテリー(40kWh×2)を、設置型の大型蓄電池(125kWh)とともに、街区の蓄電システムとして運用する。しかし、EVの使い方はこれだけでない。EV本来のクルマとしての役割も生きている。この2台は、街区住民共有のシェアカーとして使うことができるのだ。

 Looopでは、平日は蓄電池として街区のエネルギーマネジメントに活用し、土日は希望する街区住民に乗ってもらおうと予定している。さらに、シェアカーとしてEVを導入することで、EVそのものの普及を後押しし、交通における脱炭素にも貢献していければと期待する。また、災害時には、動く蓄電池として、その機動力を生かしていきたい考えだ。

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