太陽光発電の「スマート保安」を推進する意義とは何か?法令違反を防ぐ太陽光発電の保安ポイント(4)(2/3 ページ)

» 2022年05月13日 07時00分 公開

「スマート保安」は「予防保全」と「予知保全」の掛け合わせ

 スマート保安を具体的なO&M業務の視点で考えた場合のポイントとなるのが、前回も解説したように、「予防保全」の良いところを残しつつ「予知保全」に段階を経て移行すると想定される点です。

 予防保全と予知保全について改めて違いを解説しておくと、まず予防保全とは「月次点検、年次点検、定期点検などの一定期間であらかじめ定めた点検項目に沿って発電所・設備のメンテナンスをおこない、部品交換や補修する方法」です。一方の予知保全は、「リアルタイムのモニタリングデータや、過去の点検データなどから、発電所の不具合や故障をあらかじめ予知し、故障などの兆候が発現したら早めに対処する方法」になります。

 予知保全の導入が進めば、設備の重度の故障・破損なども減らせると考えています。下記に予防保全と予知保全の対比をまとめました。

スマート保安の重要性

 太陽光発電の主力電源に向けては、コスト削減も重要な課題です。各諸団体や各企業は、コスト削減に向け業界を挙げて切磋琢磨しながら日々活動していると思われます。

 コスト削減には、開発費・設置費などのイニシャルコストとともに、年々増える維持管理費・修理費や技術者の人件費等のランニングコスト削減も重要です。また、現場では先端技術の導入が十分に進んでおらず、人による作業に依存している実情の改善と高齢化による人材不足への対応を求められています。

 太陽光発電の発電コストLCOE(Levelized Cost of Energy)の低減は進んでいると思われますが、さらに安全性を維持及び向上しつつ、リスクを下げながら、ランニングコストを削減することが重要です。

 2050年カーボンニュートラルおよび2030年の温室効果ガスの削減目標の実現が2022年3月に閣議決定し、2023年に改正予定のエネルギーの合理化等に関する法律(省エネ法)の対応に向け、スマート保安の導入は待ったなしと言えます。私は、海外の保安動向・状態を踏まえつつ、官民が一丸となって取り組むべき施策と考えます。

 デジタル化、技術革新及び経済合理性を伴ったスマート保安の実現は、慢性化し、さらに悪化する技術者不足問題、新しい生活様式への対応など社会的問題の解決だけでなく、我が国発の新しい技術、新しいルール、新しい産業の創出による企業の競争力強化にもつながり世界に先駆ける重要な施策となると考えます。

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