省エネ法が抜本改正! 再エネ活用を促す新たな制度も――事業者の対応は何が変わる?【前編】法制度・規制(1/3 ページ)

2022年5月に改正が決まった省エネ法。新たに太陽光などの再エネや、アンモニアなどの「非化石エネルギー」の利用や、デマンドレスポンスなどの需要家側の対策に関する内容が盛り込まれるなど、対象事業者にとっては“抜本的な改正”となりそうだ。本稿では2023年4月の施行に向けて進められている詳細な制度設計の方向性と概要を解説する。

» 2022年06月16日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 省エネ法が2022年5月に改正され、2023年4月の施行が予定されている。

 省エネ法は従来、化石エネルギーの消費を減らすことが主目的であったが、今回の改正では、非化石エネルギーの導入拡大やデマンドレスポンス(DR)の推進など、需要化側の対策の高度化や、レジリエンスの強化など抜本的な改正が行われた。これに伴い、その名称も「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」から「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」に変更されている。

 資源エネルギー庁の「省エネルギー小委員会 工場等判断基準ワーキンググループ(WG)」では、改正省エネ法に基づく制度の具体化に向けた議論が開始された。

これまでの省エネ法の概要

 現行(従来)の省エネ法では、エネルギー使用量が1,500kl(原油換算)/年以上の工場等の「特定事業者」や輸送事業者・荷主に、エネルギーの使用状況等の定期報告を義務付けている。さらに、エネルギー消費原単位を年平均1%以上改善することを求めている。

図1.エネルギー消費原単位の算出式

 同法の近年の対象事業者数は1万4000程度であり、エネルギー使用量ベースでは産業部門の約9割、業務部門の約4割をカバーしている。

 また一般消費者に身近な分野としては「トップランナー制度」があり、エアコン等の家電製品製造事業者には、機器のエネルギー効率改善目標の達成が求められている。

 さらに、家電等の販売店やエネルギー小売事業者(電力会社、ガス会社)は、消費者に対して省エネに資する情報の提供等が努力義務として課されている。

改正で「エネルギーの定義」を見直しへ

 その名の通り「省エネ」を目的とした省エネ法であるが、オイルショックを契機に1979年に制定されたことに由来して、省エネ法が対象とする「エネルギー」とは「化石由来エネルギー(燃料、熱、電気)」のみであった。このため太陽光由来の電気やバイオマス、水素・アンモニアといった非化石エネルギーは「エネルギー」の定義に該当せず、使用の合理化の対象外となっている。

 つまり、特定事業者が化石燃料から例えばバイオマス燃料に10%転換するだけで、実際のエネルギー使用量は変わらずとも(逆に“増エネ”となったとしても)、「10%の省エネ」が達成されるということとなる。

 改正省エネ法では、すべての非化石エネルギーを対象とすることにより、再エネを導入すれば省エネが達成されるという、このややいびつな状態は解消されることとなる。

 改正省エネ法に対しては、「再エネを買えばよいのであれば、省エネ努力がおろそかになる」という誤解が存在するようであるが、むしろ実態は真逆であることに留意願いたい。

図2.改正省エネ法が対象とするエネルギー 出所:工場等判断基準WG

 なお現状では水素・アンモニアや合成燃料は、その起源が化石燃料であるものが大半であるため、これを非化石燃料と定義することに対して異論も存在する。この点についてはいったんは非化石として位置付け、将来的な評価については引き続き検討することとしている。

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