2023年度に「長期脱炭素電源オークション」が始動、対象電源と制度設計の詳細は?エネルギー管理(3/4 ページ)

» 2022年06月29日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

LNG火力の別途募集

 高経年火力発電所の休廃止が増加していることにより、供給力不足による電力需給逼迫の頻発が懸念されており、すでに供給力公募を通じた供給力の追加的確保が恒常化しつつある。

 このため脱炭素電源とは「別枠」として、早期の供給力提供開始を前提条件とした、安定的火力電源の新設・リプレースを、長期脱炭素電源オークションを通じて一定期間内に限り、募集することとする。

 その際、燃料種別としては、相対的に低炭素であることや調整力としても期待できることから、LNG火力のみを対象とする。

 これは早期の供給力確保を目的とした暫定的措置であることから、LNG火力の供給力提供開始期限は通常よりも早い6年と設定する。

 また脱炭素電源とは別枠ではあるものの、アンモニア・水素等の専焼化への道筋も当該事業者に対して求めることとする。

電源ごとの最低入札容量は?

 現行の容量市場では最低入札容量を1,000kW(期待容量ベース)としており、幅広い電源等の参加を可能としている。

 他方、そもそも長期脱炭素電源オークションは、アンモニア・水素専焼等の大規模な電源新設に対して長期的収入の予見性を与える措置であることや、運転開始後の他市場収益の還付手続きなど、制度の運用コストが相対的に大きくなると想定される。

 このため最低入札容量は、初期投資額が100億円を超える水準となることが想定される10万kWとする。

表3.電源種別 建設費の金額イメージ(10万kW)単位:億円 出所:制度検討作業部会

 現行の容量市場では最低入札容量を「期待容量ベース」で設定しているが、例えば変動電源太陽光発電の場合、調整係数が0.1であれば「期待容量10万kW÷調整係数0.1」=送電端設備容量100万kWとなり、応札は非常に大規模な電源に限られてしまう。

 このため、長期脱炭素電源オークションではすべての電源等において、「送電端設備容量」を用いることとする。

表4.最低入札容量 出所:制度検討作業部会

 また既設火力のアンモニア・水素混焼に向けた改修案件については、例えば水素では混焼率10%が対象となることから、設備容量全体ではその10倍、つまり100万kWの大規模電源に限られてしまう。

 このため、既設火力のアンモニア・水素混焼に向けた改修案件では、5万kW(混焼kW相当)を最低入札容量とする。

 また蓄電池については直近の導入状況を踏まえ、1万kW(放電可能時間3時間以上)を最低入札容量とする。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.