風力発電の導入には蓄電池の併設が義務付けられていた北海道。しかし風力発電のさらなる導入拡大に向けて、2023年7月以降に接続検討の受付を行う新規電源については、変動緩和要件に基づく蓄電池の併設を求めない方針となりそうだ。
北海道エリアは風況が良く、風力発電等の再エネ電源のポテンシャルの大きなエリアであり、2022年2月時点での再エネ接続量は、太陽光214万kW、風力58万kWである。
他方、最大需要は500万kW程度、年間平均でも300万kW程度とエリアの需要規模が小さい。そのため、需給バランス制約による再エネ出力制御が起こりやすいほか、再エネ電源の出力変動に対応するための調整力(ΔkW)確保の観点から、再エネ導入拡大に向けた課題も存在する。
このため北海道電力ネットワーク(当時は北海道電力)は2013年に独自の系統接続条件を定め、変動再エネ(風力・太陽光)に対して出力変動緩和要件を設定し、実質的に蓄電池の併設を求めてきた。
しかし大容量蓄電池は高額であり、再エネ発電事業の採算性を悪化させることから、出力変動緩和要件は再エネ導入の阻害要因となり得るものであった。
このため資源エネルギー庁の系統ワーキンググループ(WG)では、この要件撤廃に向けて検討を進めてきたが、このほど2023年7月以降に接続検討の受付を行う新規電源については、変動緩和要件を求めないという結論が示された。
電力を安定的に供給するためには、常に電力需要と発電出力のバランスを保つ必要がある。これまで九州エリア等で顕在化してきた課題は図1の「③下げ代面」と記された需給制約であったが、最近では送電面での課題である系統制約のほか、再生可能エネルギー電源などの出力変動に対する調整力の確保が新たな制約として認識されつつある。
北海道エリアは比較的系統規模が小さいことから、2013年に「系統アクセスマニュアル(系統連系技術要件)」が改正され、出力変動緩和対策として以下の技術要件を満たすことが必要とされている。なお北海道電力NWでは、周波数を50±0.3Hzの範囲に維持することを運用目標としている。
全ての時間帯において、発電所合成出力の変化速度を「発電所定格出力の1%以下/分」
以下の指定時間帯において、発電所合成出力の変動方向を制御
これらの出力変動緩和対策は、新たに系統に接続する個々の発電所(個々のサイト)に対して求める要件であることから、社会全体としての費用対効果が悪いことが指摘されていた。
一般的に、風力発電等の変動再エネ電源の導入が拡大すると、その出力変動について「平滑化効果(ならし効果)」が働き、設備容量に対する変動割合は小さくなることが知られている。
特に、短周期の変動成分であるほど、狭い範囲においても異なる風力発電所の出力変動は無相関に近く、平滑化効果が大きい。他方、長い変動成分になるほど平滑化効果は相対的に小さくなり、風力発電所の立地の分布状況が重要となる。
このため北海道電力ネットワーク(NW)では、系統側で一括して出力変動対策を講じることを目的として、系統用蓄電池の設置に係る費用を共同負担することを前提とした「蓄電池募集プロセス(系統側蓄電池による風力発電募集プロセス)」が2017年から行われている。
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