北海道の風力発電、蓄電池の併設が不要に――2023年7月以降の新設電源から(4/4 ページ)

» 2022年07月12日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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出力変動緩和要件の撤廃へ

 上記シミュレーションでは、当面の間(現在58万kWの風力が250万kWへ増加するまでの間)は、調整力不足が生じる断面は限定的であるとの結果が得られた。

 なお北海道エリアでは、2022年5月に初の再エネ出力制御が実施されたが、今後の再エネ接続量の増加に伴い、出力制御の発生頻度は高まるものと予想される。

 つまり、風力が250万kWへと増加するに従い、「調整力不足」が生じる前に、「下げ代不足」による、出力制御が頻発すると予想される。

 このとき、系統接続設備容量(kW)は大きいものの、実際の出力(kW)は相対的に小さいままであることが予想されることから、調整力不足はそれほど深刻な問題とならない可能性もある。

 上記のように、蓄電池等の新たな調整力リソースの導入拡大が期待されるものの、それでも調整力不足が生じた際には、変動電源の出力制御を行うことにより、調整力必要量そのものを低減することが妥当と考えられる。

 最適な出力制御に向けてはシステム開発が必要となるが、その開発には要件確定から2年程度を要するものと想定される。

 他方、物理的な連系ができずとも接続の受付を開始することは可能であるため、2023年7月以降に接続検討の受付を行う新規電源については、変動緩和要件を撤廃することとされた。

 既存電源と新規電源の間の公平性の観点から、調整力不足による出力制御の対象は、この2023年7月以降の電源に限定される予定である。

調整力不足による出力制御の情報公開

 再エネの出力制御要因には、現行の需給バランス制約(下げ代不足)のほか、今後は系統制約(送電容量不足)や調整力制約(調整力不足)が加わることは先述のとおりである。

 現在、需給制約によって再エネの出力制御が発生する可能性がある場合には、事前に各一般送配電事業者のホームページにおいて、出力制御の見通しや出力制御指示の内容が公表されている。

 発電事業者の予見可能性を確保するためには、調整力制約についても情報公開が必要とされるが、調整力不足による出力制御の発生は、調整電源等や変動電源の実際の導入量に大きく左右されることとなる。

 このため、まずは系統WGにおいて、今回のようなシミュレーション等を通じた情報提供を年一回程度行うこととする。

 表1で示したように、今回のシミュレーションはあくまで2021年度という1年間だけの実績に基づく結果であり、試算精度というよりも、大きな傾向を把握することを目的としていると考えられる。

 今後は複数年の実績を用いることや、追加連系風力の平滑化効果を考慮した、より高精度なシミュレーション実施が期待される。

著者プロフィール

梅田 あおば(うめだ あおば)/ ライター、電力事業アナリスト
専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。
Twitterアカウント:@Aoba_Umed


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