北海道の風力発電、蓄電池の併設が不要に――2023年7月以降の新設電源から(2/4 ページ)

» 2022年07月12日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

調整力必要量に関するシミュレーション

 電力の安定供給のため、調整力の確保は必要不可欠である。そのため北海道では従来、確保済み調整力の範囲内を前提として再エネを追加導入するために、変動緩和要件を設定してきたという経緯がある。

 カーボンニュートラルに向けた再エネ大量導入が期待される現在、北海道電力NWではこの考え方(順序)を逆転し、一定量の再エネを導入するにあたっては、どの程度多くの調整力が必要となるかをシミュレートし、調整力確保に向けた費用便益評価を行うこととした。

 北電NWは第40回「系統WG」において、以下のような前提条件に基づくシミュレーション結果を報告している。

表1.シミュレーションの前提条件 出所:北海道電力NW

 シミュレーションでは風力発電単体の変動を捉えるのではなく、エリア需要と太陽光を考慮した残余需要(=エリア需要−太陽光発電−風力発電)から算定する方法を採用している。

 ただし、風力の追加連系分については平滑化効果を考慮せず、2021年度実績の予測誤差と30分内変動が、そのまま整数倍で拡大していくと仮定している。

 この前提条件のもと、風力発電を100万kW、200万kWと追加連系した場合に、新たに必要となる調整力をシミュレーションした結果が表2・図3である。一次〜三次①調整力とは、一般送配電事業者(ここでは北電NW)が需給調整市場から広域的に調達する商品である。

表2.シミュレーション結果 出所:北海道電力NW

 シミュレーションでは需要と太陽光の変動が考慮されているため、需要変動が大きい場合は風力設備量の増加に対する調整力の増分は小さくなる。

 このため、風力の追加連系量が0から100万kWに増加する際には、風力の変動が需要等の変動量に埋もれるかたちとなるが、400万から500万kWに増加する際には、風力自身の変動が支配的となるため、調整力の増加分は32.1万kW(88.6万kW−56.5万kW)と大きなものとなる。

図3.シミュレーション結果 出所:北海道電力NW

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