電力だけでなくガスも需給逼迫に備えを、政府が「節ガス」施策を検討エネルギー管理(1/4 ページ)

電力需給の逼迫を背景に「節電」への注目が集まっている昨今。政府は電力と並び重要な生活インフラであるガスについても、万が一を想定した「節ガス」の方策について検討中だ。

» 2022年07月21日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 ウクライナ情勢の悪化により、世界的にガス需給の逼迫や価格高騰が続いている。

 日本はガスの大半をLNG(液化天然ガス)というかたちで海外から輸入しており、その総量は約7,432万トン(2021年度)に上る。このうち、ロシアからの輸入比率は約9%である。

 これまで都市ガス事業者は、安定供給の観点からLNGの長期契約比率が高く、十分なLNG在庫量を確保してきており、現時点では都市ガスの需給逼迫は生じておらず、需給逼迫の具体的な懸念が存在するわけでもない。

 しかしながら、脱ロシアを図る欧州諸国によりLNG獲得競争が激化する中、LNG生産国の設備トラブル等によるLNG調達不調といった万一の事態に備え、都市ガスの需給逼迫への対応についてあらかじめ検討し、準備することは有益であると考えられる。

 これまで電力については、すでに需要側対策による需給逼迫への対応が実際に講じられてきたが、資源エネルギー庁では、電力・ガス基本政策小委員会やガス事業制度検討ワーキンググループ(WG)において、ガスの需要対策の在り方に関する検討を開始した。

 なお、ここでのガスとはいわゆる都市ガスを指しているが、論点によってはLPガス(プロパンガス)も関係することとなる。

日本の都市ガス事業の状況

 日本が輸入するLNGのうち、約35%が都市ガス用であり、残りの約65%は発電その他に充てられる。

 ガスと電力は共通点も多いが、相違点も多い事業である。都市ガス事業者(一般ガス導管事業者)は、全国で193事業者存在し、事業者の規模が業界内でも大きく異なる。また、都市ガスの導管網は原則、地域ごとに分断されており、全国的なネットワークとはなっていない。電力分野での「卸取引所」や「広域的運営推進機関」に相当する組織も存在しない。

 都市ガス一契約当たりの全国平均販売量(月間)は、家庭用で約45m3、商業用で約340 m3、工業用は約51,701m3である。

 需要種別の都市ガス販売量と契約件数(2022年3月時点)は表1の通りであり、工業用の都市ガス需要は契約件数では0.1%でありながら、販売量では全体の52.7%を占めている。

表1.需要種別の都市ガス販売量と契約件数 出所:ガス事業制度検討WG

 LNG生産地でのトラブルや自然災害、テロリズム等が発生した場合の備えとして、すでに日本ガス協会は「大規模供給途絶時の対応ガイドライン」を策定しており、事業者間でガス原料の融通を行えるよう体制を整備している。

図1.大規模供給途絶時の対応ガイドライン概要 出所:日本ガス協会

 また国は、「電力・ガス需給と燃料(LNG)調達に関する官民連絡会議」を昨年10月に開催し、電力・ガス事業者に対して、計画的なLNGの調達や、業界の垣根を越えた協力を要請しているが、その後、本連絡会議は開催されていない。

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