節電のレベル2に相当する水準として、ネットワーク内のすべてのガス需要家に対して、数値目標付きの節ガス要請を行う場合、レベル1以上に節ガスの具体的手段やその効果に関する情報提供が重要となる。
個別需要家に対して、ガス需要のさらなる抑制を要請する場合、ガス使用量の多い大口需要家を対象とすることが適当である。
一部の大口供給の約款には、需要調整に係る適用条件が規定されている場合があり、「当社または一般ガス導管事業者が不測の需給逼迫等の緊急時において必要と認めた場合には、緊急調整(供給の制限または中止)に応じられる需要であること」と記されている。
「節電」が要請された場合には、自社敷地内で自らが発電(太陽光やガス火力)することにより一定の代替・節電貢献が可能であるが、ガスを他のエネルギーで短期的に代替することは、通常困難であると考えられる。よって多くの場合、ガス消費量の純粋な削減策が求められる。
電力分野では、電気事業法により「電力使用制限令」の発令が可能となっており、違反者は罰金が科される可能性がある。他方、ガス事業法では現時点、そのような命令は措置されておらず、規制的な手段は存在しない。
このためガス事業制度検討WGにおいても複数の委員から、使用制限令を設けるべきとの意見が相次いだ。
ただし、電力使用制限令でもすべての需要家が対象となるわけではなく、契約kWが500kW以上の大口需要家に限定されており、病院や上下水道等の社会インフラに対しては除外や緩和が規定されている。よって、ガスで使用制限令が設けられた場合も、同様であると考えられる。
なお電力分野では、広告灯や電飾、ネオンサイン等、短期の節電が相対的に容易な用途では、その規模を問わず優先的に使用制限対象となるが、ガスでは元々このような用途はほぼ無いと考えられる。
企業の多くは、震災や感染症等のさまざまなリスクに対してすでに事業継続計画(BCP)を策定していると考えられるが、これまでガスの需給逼迫は発生したことがないため、これはBCPに明確に位置付けられていない可能性もある。
ガスで需給逼迫が発生する時点では、同じく電力や石油等、幅広くエネルギー需給の逼迫や価格高騰が発生している可能性が高い。
万一のガス需給逼迫に備えて、BCPを継続的に更新していくことが望まれる。
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