託送料金は上昇の見通し、レベニューキャップ制度開始へ電力10社が収支計画を提出法制度・規制(1/4 ページ)

一般送配電事業者が一定期間ごとに収入上限を決める「レベニューキャップ制度」が2023年4月からスタートする。各社の収入上限が、今後の託送料金の算定基準となる仕組みだ。この新制度に向け、一般送配電事業者10社が国に事業計画を提出し、その審査・検証がスタートした。

» 2022年08月10日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2023年4月から、新たな託送料金制度「レベニューキャップ制度」が開始される。同制度において一般送配電事業者は、一定期間(第一規制期間は2023〜2027年度までの5年間)ごとに収入上限について承認を受け、その範囲で柔軟に託送料金を設定できる。

 改正電気事業法において、一般送配電事業者は、その業務を「能率的かつ適正」に運営するために通常必要と見込まれる収入を算定し、経済産業大臣の承認を受けなければならないと規定されている。

 一般送配電事業者は、国が公表した指針に基づき、規制期間において達成すべき目標項目や、発電・需要見込みや再エネ連系量予測などの前提計画、目標事項を達成するための事業内容(投資計画、費用計画、効率化計画)などを示した「事業計画」を策定することが求められている。

図1.レベニューキャップ「事業計画」の全体構成 出所:料金制度専門会合

 今般、一般送配電事業者10社から電力・ガス取引監視等委員会に対して、各社の事業計画が提出されたことから、「料金制度専門会合」の第14回・第15回会合において、実質的に各社収入上限の審査・検証が開始された。

 なお本稿では、一般送配電事業者10社の報告資料から幅広く、代表的な図表、もしくは特徴的な図表を引用して説明するものとする。

一般送配電事業者の「目標計画」とは?

 レベニューキャップ制度において、一般送配電事業者は国が策定した指針に基づき、当該規制期間の「目標計画」を策定することが求められている。

 各社の目標計画では図2のように、安定供給や再エネ導入拡大等の7つの分野、その内訳として停電対応や設備拡充等の19の項目において目標を設定する。図2は中国電力ネットワーク(NW)の例である。

 7分野・19項目の目標は全社で共通のフォーマットであるが、中部電力パワーグリッド(PG)は独自に、第8の分野として「公平性・透明性」を、第20の項目として「競争環境の充実」における目標を設定している。

図2.目標計画の概要(中国電力NWの例) 出所:中国電力ネットワーク株式会社

 国は各社に目標の達成を促すため、それら目標の達成状況に応じたインセンティブを設定している。

 例えば「安定供給・停電対応」のような定量的に評価が可能な目標に対しては、その達成度合いに応じて、翌規制期間の収入上限を引き上げ(もしくは引き下げ)するボーナス・ペナルティを付与することとしている。

 これに対して、便益が中長期的に表れる目標や、「サービスレベルの向上・顧客満足度」のように定性的な評価を行う目標については、その達成状況の公表によるレピュテーショナルインセンティブを付与することとしている。

 具体的な目標設定の一例として、北海道電力ネットワーク社(北電NW)では、低圧電灯需要家の年間停電量(外生的要因を除く)を、過去5カ年平均の44MWh以下とすることを目標としている。

 北電NWでは直近の5年間において、低圧電灯の停電(5カ年平均)のうち、設備不良等の内生要因による停電件数は約300件、停電量は44MWh程度で推移している。自然災害等の外生的な要因による停電は一般送配電事業者により直接的にコントロールできないため、目標・評価の対象とはされないが、国はその実績を確認することとしている。

図3.過去5カ年の停電件数(北電NW) 出所:北海道電力ネットワーク株式会社

 北電NWではこの目標達成のため、ドローン活用による巡視・点検のDX推進による設備劣化状況の早期把握や、センサー開閉器導入による早期の事故箇所の特定に取り組むことを計画している。

 なお、目標はあくまで各社独自に設定すべきものであるため、例えば停電量を従来の半分とする、という目標であっても構わない。ただし停電量を大きく減らすには、新たな設備投資や人件費増加が想定されるため、その費用対効果は十分に検証する必要がある。

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