委員会における最大の論点は、再エネ電源の種類の定義であり、大型水力(揚水発電を除く)をこれに含めるか否かで、委員間の意見が分かれている。
再エネ特措法(FIT法)では、太陽光・風力・地熱・バイオマス・水力の5つの種類があるが、3万kW以上の大型水力は対象とされていない。
なおここでは、あくまで電源種別を論じており、FIT電源か否かを論じているわけではない。
現時点において、事務局は再エネ電源の種類に関して、以下の2案を並列している。
※「大型水力」とは出力3万kW以上の水力発電(揚水発電を除く)
事務局は、政府実行計画においても大型水力を除外していないことを根拠として、案2では現時点では大型水力を対象とする。ただし、今後政府実行計画等で再エネの定義の整理が進んだ場合には、環境配慮契約法においても整合するように見直すことを明記する。
なお上述のとおり再エネ電力の評価は、裾切り評価段階と料金メニュー段階の2つがあるため、案1と2は、どちらかに統一する案、もしくは別々で構わないとする案の双方があり得るが、これについても委員間の意見は割れている。
事務局資料上は明記されていないが、裾切り評価段階では、非化石証書のトラッキングは不要と考えられる。
※編集注:【訂正】表3のキャプションについて、内容と出所を訂正いたしました(2022/09/15 17:00)
上述のとおり、本制度における調達再エネ電力および裾切り方式の再エネの導入状況とは、いずれにおいても事実上、非化石証書等の調達率を意味している。
仮に、ここで大型水力由来の非化石証書を除外するならば、CO2排出係数(2030年度0.31kg-CO2/kWh等)の算定においても、大型水力を除外することが整合的と考えられる。
非化石証書の複数の価値(高度化法非化石価値・CO2ゼロエミ価値・環境表示価値)のうち、環境表示価値の行使は否定しながら、CO2ゼロエミ価値は行使する(享受する)、という説は、ややご都合主義であり、合理性・一貫性に欠けるといえる。
大型水力については、CO2排出係数・調達電力再エネ比率・裾切り基準、いずれにおいても除外する、という案が検討の俎上(そじょう)に乗っていないことに、筆者は矛盾を感じている。
ここで、環境配慮契約はあくまで価格入札であるという観点から、小売電気事業者の行動を推測してみよう。
非化石証書の市場取引最低価格は、現在、FIT証書で0.3円/kWh、非FIT証書では0.6円/kWhと定められている。高い証書を購入することは、単純に環境配慮契約入札で不利となるので、市場で非FIT証書を買う小売事業者はおらず、潤沢なFIT証書を0.3円で購入して応札すると推測される。
この場合、再エネ電力に大型水力を含めたとしても、実態としては大型水力を除外することと同じ状態になると考えられる。ただし、非FIT証書は相対取引も可能である。現在、非化石証書はFIT/非FITいずれも大きく売れ残りが生じているため、売れ残りを嫌う発電事業者が相対取引により、0.3円以下で売却される可能性は残る。
本来のエネルギー供給構造高度化法の目標水準の在り方や、今後、非化石証書の最低価格が再び変更されることを注視する必要があるだろう。
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