「再エネ電力」の定義で議論紛糾、まとまらない「環境配慮契約」の改定方針法制度・規制(3/5 ページ)

» 2022年09月14日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

意見が割れる環境配慮契約法における「再エネ電力」の定義

 環境配慮契約法において、再エネ電力は2つの段階で評価される。

 第一の段階が、入札参加資格を得るか否かの判断となる「裾切り方式」評価項目としての「再エネの導入状況」である。これは小売電気事業者を評価することを意味する。

 第二の段階が、入札に登録する(落札後は実際に需要家に電気を供給する)料金メニューの「再エネ電力比率」である。これは料金メニューを評価することを意味する。

 料金メニューとして「再エネ100%」の電気を供給することと、小売事業者としての調達電力再エネ比率は別物であるため、この両者を評価する仕組みであるといえる。

 また議論の大前提として、非化石証書制度が導入された現在、電力そのもので再エネか否かを判断するのではなく、環境価値が化体された非化石証書の有無や、J-クレジット等の環境価値の有無により、再エネか否かが判断される。いわゆる「抜け殻電力」は本制度でも再エネとは見なされない。

 ここまで用語を定義することなく、「再エネ」電力という言葉を用いてきたが、本制度上、どのような再エネ電力を対象とするかは難しい問題である。

 現在の環境配慮契約においては、CO2排出係数などは要件として定められているものの、再エネ電力の調達そのものについては何の言及も無いことが現状である(つまり、再エネ電力の調達がゼロであっても構わない)。

 このため環境省では2021年度の「電力専門委員会」において、環境配慮契約法基本方針を改定することにより直接的に再エネ電力の調達を求める方針を示してきた。

 ところが、再エネ電力の定義に関して委員間の合意が得られない異例の事態となったため、本件は2022年度も継続協議となっている。

 再エネ電力の定義が未定の状態では、公共機関は入札仕様書を作成することが出来ないため、事務局は、環境配慮契約法基本方針を改定するという議題そのものを取り下げざるを得なくなった。

 これにより、国等の機関が環境配慮契約法において再エネ電力を調達することは1年先送りされる結果となり、再エネ電力の大規模な需要の顕在化も先送りされた。

 国等の機関が調達する再エネ電力(料金メニュー)に関して、事務局からは、「必須要件」と「推奨事項」が提案されている。

 まず必須要件は、「再エネ電源の特定」である。電源の特定方法は、相対取引もしくは非化石証書のトラッキングを用いる。

 推奨事項としては、「1.可能な限り「追加性」を有すること」「2.PPA方式等による積極的な再エネ電源の選択」の2点が挙げられている。

 事務局は「追加性」とは何かを定義しておらず、今後も定義の予定は無いことを明言しているが、おおむね「なるべく新しい発電設備」の意味で用いているようである。

 もしそうであれば、単純に「なるべく新しい発電設備を推奨する」のように記述すればよいのであって、意味が定まらず論争の種ともなりかねない用語を使うことは避けるべきと考えられる。

 以上より、本制度における再エネ電源は、なるべく新しい発電設備を対象として調達することが望ましいものの、当面の間は、一定の年数を経過した発電設備(大型水力や卒FIT電源等)についても、発電継続・設備維持の観点から、調達電力の再エネ電源の対象とすることとしている。

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