「再エネ電力」の定義で議論紛糾、まとまらない「環境配慮契約」の改定方針法制度・規制(2/5 ページ)

» 2022年09月14日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

入札可能な小売電気事業者の選定基準は?

 電気の環境配慮契約においては、一定のCO2排出係数が閾値として設けられており、これを上回る小売電気事業者は、実質的に入札に参加することが出来ない。

 このCO2排出係数閾値は、当該小売事業者が応札・供給する再エネ電力メニュー単位で判断されるのではなく、事業者としての排出係数で判断される。

 排出係数閾値は小売電気事業者が入札にあたり最低限満たすべき数値であり、エリアを問わず全国共通の値である。排出係数閾値は小売電気事業者の予見可能性に配慮しつつ、段階的に引き下げることにより、小売電気事業者全体の排出係数を低減させることを意図している。

 現行の排出係数閾値は図3のグレーの破線であり、旧エネルギーミックスと整合的な数値とされている。

図3.2030年度に向けたCO2排出係数閾値の引き下げ案 出所:電力専門委員会

 第6次エネルギー基本計画におけるエネルギーミックスを前提とすると、2030年度の国全体のCO2排出係数は0.25kg-CO2/kWhになると試算されている。

 直近3カ年(2020年度実績は0.453kg-CO2/kWh)のCO2排出係数実績から、2030年度0.250 kg-CO2/kWhへ単純平均で直線的に描いたグラフが図3のオレンジ色の線である。オレンジ線の排出係数は、国全体の平均として達成すべき数値であるため、これをそのまま裾切り基準(入札参加資格の喪失)とすることは困難である。

 よってグレーとオレンジの中間的な数値として、直近の排出係数の平均値や標準偏差を踏まえ、2030年度の閾値を0.310kg-CO2/kWhとする。閾値は2年に一度見直すことして、緑色の破線が今後の閾値引き下げの案である。

 現行2020〜2021年度の閾値が0.690kg-CO2/kWhであることから、2023〜2024年度の閾値は0.600kg-CO2/kWhとすることが提案された。

 小売事業者の現状の排出係数と比較すると、現行閾値の0.690kgで2%の小売事業者が、0.600kgで6%、0.310kgで31%の小売事業者が入札参加資格を失うこととなる。

 0.690kg-CO2/kWhはかなり高い排出係数であり、98%の小売電気事業者がクリアするため、閾値としては弱いとの批判もあり得る。しかしながら実際には、排出係数閾値を達成することだけで自動的に入札参加資格を得ることとはならない。

 裾切り方式の必須項目には、CO2排出係数のほか、「未利用エネルギー活用状況」、「再エネ導入状況」がある。

 裾切り基準100点満点のうち、排出係数評価は最大の70点満点を占めており、「未利用エネルギー活用状況」で10点満点、「再エネ導入状況」で20点満点が与えられる。環境配慮契約の入札参加資格は70点以上であるため、これを達成するためには、「未利用エネルギー活用状況」と「再エネ導入状況」で満点の合計30点を獲得した場合、残る「排出係数」では少なくとも40点を獲得する必要がある。

表2.エリア別裾切り配点例(2021〜2022年度) 出所:電力専門委員会

 表2のように東京エリアの場合、40点を獲得するために必要となる最低限の排出係数は 0.525kg-CO2/kWh未満となる。0.525は小売事業者の中央値0.490kg-CO2/kWhに近い数値であるため、実質的に入札に参加可能な事業者は半数程度と考えられる。

 ただしここでは、省エネ情報提供等の「加点項目」を考慮していないため、加点の大きさ次第では、排出係数がより高い小売事業者も入札に参加することとなる。

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