「再エネ電力」の定義で議論紛糾、まとまらない「環境配慮契約」の改定方針法制度・規制(1/5 ページ)

国の施設などの公共施設における再エネ利用の促進に向けて、環境配慮契約の制度改定に向けた議論が進んでいる。しかし「再エネ電力」の定義や、大型水力の扱いなどについて意見が割れており、今後の動向が注目される。現状の改定方針と今後の論点についてまとめた。

» 2022年09月14日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 国の機関や地方公共団体等は、グリーン契約(環境配慮契約)を進めることが「環境配慮契約法」(国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律)により求められている。

 法の対象となる契約品目としては、自動車の購入や建築物に関する契約、廃棄物処理契約などのほか、「電気の供給を受ける契約」がある。現在、公共機関における再エネ利用の促進に向け、環境省の環境配慮契約法基本方針検討会のもとに設置された「電力専門委員会」において、新たな制度の詳細な検討が進められている。

 2021年度の「電力専門委員会」では、一部委員の反対により委員会意見の取りまとめが出来ず、「環境配慮契約法基本方針」の改定が先送りされたため、今年度に結論が得られるか注目が集まっている。

公共機関における電力需要の状況

 国や独立行政法人等の公共機関の電力需要暫定値(特高・高圧:2021年度、低圧:2020年度)は表1の通りであり、契約件数は合計10,588件、電力使用量合計は約107億kWhとなっている。これは全国の販売電力量8,374億kWh(2021年度)の、約1.3%に相当する電力量である。

表1.国等の電力契約件数および予定使用電力量 出所:電力専門委員会

 2050年カーボンニュートラル実現に向けて、「政府実行計画」(政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の削減等のため実行すべき措置について定める計画)において、国は率先して再エネ電力調達を推進すること、具体的には、2030年までに各府省庁で調達する電力の60%以上を再エネ電力とすることを掲げている。

 このため環境配慮契約法においても、2030年度の再エネ比率目標を60%以上として、可能な限りの早期達成を目指し、計画的・継続的な再エネ比率の引き上げを実施することとした。

図1.環境配慮契約 再エネ電力比率引き上げイメージ 出所:電力専門委員会

 環境配慮契約法基本方針の改訂が実現した後、国等の機関は、その電気供給契約に係る仕様書において最低限の再エネ電力比率を示すものとして、制度変更初年度の2023年度については、再エネ比率を35%とする。途中年度の数値についてはイメージであり、再エネ電力の需給状況等を踏まえて設定される。

 なお「再エネ電力」の定義については、委員会での大きな論点となっているため後述する。

供給を行う小売電気事業者は「裾切り方式」で審査

 調達する電力の再エネ比率を仕様書へ記載することは今後の環境配慮契約法基本方針変更以降となるが、現在、国等の機関による電力調達は、価格競争により小売電気事業者を選定するにあたり、「裾切り方式」により事業者の入札参加資格を審査している。

図2.公共機関 再エネ電力の調達の流れ 出所:電力専門委員会

 裾切り方式の具体的要件としては、事業者の電源構成や非化石証書の使用状況、CO2排出係数の情報を開示していることや、再エネ電力の導入率、CO2排出係数等が評価項目として設けられている。

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