本制度は、脱炭素電源の新設や既設電源の改修に向けた新たな電源投資を促すことを目的としている。従来の容量市場では、既設電源が改修等の投資を行うことなくそのまま参加・応札できるのに対して、長期脱炭素電源オークションでは新たな脱炭素化投資が必要とされる。
このため本制度では運転開始前の電源が対象とされ、単に運転開始前であるだけでなく、新設・改修のための意思決定が行われる前の案件のみが対象とされる。
この観点では、すでに容量市場で落札している「新設・リプレース案件」や「既設火力の改修案件」は、すでに投資の意思決定が行われていることから、本制度への参加は原則認められない。
ただし、従来の容量市場は供給力(kW)のみが評価される市場であるため、脱炭素化のための改修を前提とせずに容量市場に応札・落札した既設電源も多いと考えられる。このような既設電源が、アンモニア・水素混焼やバイオマス専焼にするための意思決定を行い、その改修を行うために、長期脱炭素電源オークションに参加することは認められる。
このように、元々容量市場で落札していた電源が長期脱炭素電源オークションでも落札する場合、本制度の対象kW部分は容量市場から退出することとなる。この場合、国全体の供給力kWが減少するわけではないため、容量市場における市場退出ペナルティは適用しないこととされた。
従来の容量市場では、オークション開催4年後の実需給年度において供給力kWを提供することが必須条件であるのに対して、長期脱炭素電源オークションでは電源種ごとに供給力提供開始期限を設定し、それまでの間に供給力の提供を開始することをリクワイアメントとして求めることとしている。
具体的な供給力提供開始期限は、電源種ごとの建設リードタイムの実態を踏まえるとともに、「X年後の日」ではなく、案件管理単純化のため「X年後の日が属する年度の末日(3月31日)」と設定されている。
これはあくまで開始期限であるため、図6のように、現実の運転開始日(供給力提供開始日)は開始期限(α年度)よりも早いX年度の途中であることが一般的と予想される。このとき、本制度の制度適用期間(20年)の始期をどうするかということが論点となる。
実際の運転開始日による日割りとする案1や、年度単位として、運転開始年度とする案2、運転の翌年度とする案3が比較検討され、事務局は早期の運転開始を促す観点や制度の複雑化を避ける観点から、案3を支持している。
なおいずれの案においても、長期脱炭素電源オークションの非適用期間は、任意に容量市場に参加して容量収入を得ることは可能である。
なお、本制度の運用システムの構築には2〜3年程度の期間が必要と想定されるため、2026年度内に本制度の運用を行うことは困難である。
このため、本制度落札電源の制度適用期間は早くとも2027年度以降とし、それよりも早期に供給力の提供を開始する案件は、現行容量市場の追加オークションに参加できる特例が設けられた。
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