長期脱炭素電源オークションは容量市場の「特別オークション」の一つと位置付けられており、長期的な供給力の確保が最大の目的である(ただし本制度では、脱炭素化も等しく重要である)。
このため、長期脱炭素電源オークションの拠出金の負担者は、現行容量市場と同様に小売電気事業者と送配電事業者であり、小売電気事業者は容量拠出金を支払うことにより供給能力確保義務を果たすこととなる。
本制度で落札した脱炭素電源は、本制度による容量収入のほか、JEPXスポット市場や需給調整市場、非化石市場からkWh価値・ΔkW価値、非化石価値に対する収入(以下、他市場収益)を得ることが通常である。
ここで、入札事業者自身が他市場収益を予想し、応札価格から控除する「容量市場」とは異なり、長期脱炭素電源オークションでは20年間の他市場収益を合理的に見積もることは不可能であることから、応札時点では他市場収益はゼロとして、事後的に還付する方法が採用された。(ただし、他市場収益の10%程度は稼働インセンティブとして発電事業者が得られることとし、90%を広域機関に還付する)
ところが最近のJEPXスポット価格高騰のように、発電事業者の他市場収益が非常に大きくなった場合は、「本制度からの容量収入」よりも発電事業者からの「還付額」の方が大きくなることも考えられる。
この場合、元々の容量拠出金を負担している小売電気事業者等に対して、広域機関からその差額を精算することとする。
長期脱炭素電源オークションは制度設計に関する論点が多く、2023年度の初回オークションを前にして、未定の部分も残されている。
本来、脱炭素電源の早期導入を目的とした本制度が、発電事業者の意思決定を足踏みさせることの無きよう、早期の制度詳細確定が望まれる。
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