長期脱炭素電源オークションの詳細設計――求められる脱炭素化ロードマップ法制度・規制(1/4 ページ)

2023年度に始まる脱炭素電源への新規投資の促進を目的とした「長期脱炭素電源オークション」。初回入札に向けて、制度の詳細の検討が進んでいる。

» 2022年10月20日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 脱炭素電源への新規投資の促進を目的とした「長期脱炭素電源オークション」は、2023年度に初回オークションを開催予定である。本オークションで落札した脱炭素電源は、その固定費水準の容量収入を原則20年間得ることにより、巨額の初期投資費用の回収が可能となる。

 制度検討作業部会「第八次中間とりまとめ」においてその制度の大枠が整理されたが、残された論点に関して制度の詳細設計が進められている。

図1.長期脱炭素電源オークション 収入の期間と対象 出所:制度検討作業部会

水素等専焼化に向けた脱炭素化ロードマップ

 脱炭素燃料の有力な候補としてアンモニアや水素があるが、現時点これらの大規模な専焼技術は開発されておらず、燃料のサプライチェーンも存在しない。

 よって長期脱炭素電源オークション(以下、本制度)では、制度開始当初はアンモニア・水素と化石燃料の混焼を許容しつつ、将来的に専焼化していくことをオークション応札の条件としている。

 このため入札事業者は、対象電源の2050年専焼化に向けた「脱炭素化ロードマップ」を作成提出することが求められ、ロードマップは落札の一定期間後に公表される。

 ロードマップには、応札電源の「建設工事期間」、「各脱炭素比率での運転期間」、「脱炭素比率を向上させる改修投資を行う場合の長期脱炭素電源オークションでの落札の時期」、「使用する脱炭素燃料(グレー、ブルー、グリーンの種別)」、「前提条件」の記載が求められる。

 図2は、アンモニア20%混焼からスタートする場合のロードマップのイメージである。

図2.専焼化への脱炭素化ロードマップ(イメージ) 出所:制度検討作業部会

 ただし本制度では、あくまで電源全体の脱炭素化を目的としているため、ロードマップの脱炭素化技術内容はアンモニア・水素専焼化に限定されるものではなく、CCSやバイオマス等の活用も可能としている。

 なお落札事業者は、合理的な理由なく専焼化に向けた追加投資を行っていない場合には、容量支払いを停止する等のペナルティが課されることとなる。

 例えば、水素等の技術開発が著しく進み、水素等の入手が容易になったにも関わらず、合理的な理由なく脱炭素化ロードマップの改訂を行わない場合は、ペナルティの対象となる。

 なお「グレー」アンモニア・水素は燃料製造時にCO2を排出するものの、燃料のサプライチェーン構築のため、当面は本制度の対象とされている。

 ただし2050年カーボンニュートラル実現のためには、早期に「ブルー」または「グリーン」のアンモニア・水素に転換していくことが必要であることから、脱炭素化ロードマップの中で、グレーからブルー/グリーンへの燃料転換の計画を示すことが求められる。

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