撤退が続く電力小売事業、今後は財務・リスクの定期報告などを義務付けへ電力供給サービス(2/5 ページ)

» 2022年11月04日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

小売登録審査における追加申請書類

 このため、今後は小売登録申請を行う者に対して市場リスク等の分析やリスク管理体制の構築等を促すため、新たに表1のような「1.事業上のリスク要因、2.対策、3.KPI」を整理した様式の提出を求めることとする。

表1.「リスク分析・管理に関する様式」のイメージ 出所:制度設計専門会合

 小売登録申請者に対して自らリスク分析・管理を行うことを促すという趣旨から、この様式は原則自由記載であるものの、小売電気事業における重要なリスク要因である「1.電力調達価格の変動、2.インバランスの発生、3.小売電気事業者間での競争」については、対策及びKPIの記載を必須とする。

 小売登録申請者は、自らの「リスク分析・管理」の検討結果を踏まえ、3年間分の事業計画書を作成し、提出することが求められる。これも様式は自由である。

 なお現実的には、スポット価格が高水準の現在、あえて小売電気事業に新規参入(登録)する事業者はごく限定的であり、十分なリスク対策が可能な事業者のみが参入すると想定される。

 よって、700社以上存在する既存の小売電気事業者のモニタリング等の在り方こそが一層重要であると考えられる。

事業開始後のモニタリング

 スポット市場価格高騰の頻発など事業環境の変化により、リスクマネジメントの重要性は一層高まっている。

 しかしながら、資源エネルギー庁が2022年3月に実施したアンケート結果(回答219社)によると、36%の事業者は、自社の資産等の経営体力を上回るリスクを取らないようなリスクマネジメントを行っていない、と回答している。

 アンケート調査に未回答の事業者が多いことから、リスクマネジメントを行っていない事業者はもっと多い可能性も高い。

 唐突な事業撤退等による需要家への影響を抑制するためには、小売電気事業者に対して持続可能な事業運営を促していくことや、国が事業運営の状況を適切に把握するための仕組みも必要である。

 このため、新たに事業者が自社事業運営の状況について自己チェックするきっかけとして、「資金の概況」や「リスク管理体制の運用状況」を、国に報告することを求める。

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