撤退が続く電力小売事業、今後は財務・リスクの定期報告などを義務付けへ電力供給サービス(4/5 ページ)

» 2022年11月04日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

小売事業撤退時の周知期間にもルールを制定

 電気事業法では、小売電気事業者はその事業を休止または廃止しようとするときは、あらかじめ相当な期間を置いて、訪問・電話・書面の送付・電子メールの送信等の方法により、事業を休廃止する旨をその需要家に対して適切に周知しなければならないことが、定められている。

 需要家保護の観点からは、円滑に他社への切替を行うことができる時間的余裕を確保し、需要家が「無契約状態」とならないよう配慮することが重要である。

 このため現行の「電力の小売営業に関する指針」では、小売電気事業者が、「需要家の料金未払や小売電気事業者の倒産等」を理由に小売供給契約を解除する場合、15日程度前までに需要家に解除予告通知を行うことを求めている。

 ところが比較的規模の大きな小売事業者の撤退の場合などは、15日程度で需要家が他社へ切り替えることが困難なケースが発生している。

 このため、小売事業者に起因して「1万件以上の契約を解除する場合」や「特別高圧・高圧の契約を解除する場合」、「官公庁等の需要家側で入札手続が必要となる場合」などにおいては、「90日以上」の周知期間を確保することが適切と考えられる。

 これらのケース以外(1万件未満の低圧需要家のみ)については、通信事業を参考に、30日以上の周知期間が必要とされる。

苦情・問合せの処理体制

 電気事業法において小売電気事業者は、小売供給の業務の方法または小売供給に係る料金その他の供給条件についての需要家からの苦情及び問合せについて、適切かつ迅速にこれを処理しなければならない義務を負っている。

 仮に小売電気事業者が事業の休廃止を公表した際には、相当数の苦情・問合せが殺到することが想定されるが、そのような苦情等の増加にも適切に対応するよう、「電力の小売営業に関する指針」を改定する。

 ただし現実的には、撤退を予定している事業者がコールセンターを拡充する費用を賄うことは困難であると予想され、本件は解決の難しい課題であると考えられる。

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