撤退が続く電力小売事業、今後は財務・リスクの定期報告などを義務付けへ電力供給サービス(1/5 ページ)

電力自由化がスタートし、700社を超える事業者が参入した電力小売事業。しかし市場環境の悪化などにより、最近では撤退の動きも目立っている。こうした状況に対し、経産省では需要家保護や社会的負担抑制の観点から、電力小売事業の認可などに関する制度変更の検討を開始した。

» 2022年11月04日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 電力小売の全面自由化以降、小売電気事業者の登録件数は一貫して増加してきたが、スポット価格の高騰等により事業環境が悪化するに伴い、2022年度には微減傾向が続いている。

 2022年9月末時点の小売電気事業者の登録数は732社であり、事業承継は122件、事業休止件数は23件、事業廃止や法人の解散は75件となっている。

 小売電気事業者の突然の事業撤退等は需要家に混乱を招くおそれがあるほか、送配電事業者に対する託送料金やインバランス料金の未払いが生じることは、将来の託送料金の値上げを通じて、広く需要家の負担となり得るものである。

図1.小売電気事業者の登録数の推移 出所:電力・ガス基本政策小委員会

 このため電力・ガス取引監視等委員会の制度設計専門会合では、需要家保護や社会的負担抑制の観点から、小売電気事業の「1.事業開始時」「2.事業開始後」「3.事業撤退時」の3段階について、制度変更や運用の変更に関する検討を行ってきた。

事業開始時の小売登録審査

 すでに小売電気事業は自由化されているため、公正な競争の結果として、小売電気事業者の撤退等は発生し得るものである。

 他方、電気は生活必需品であるため、仮に小売事業者の撤退等が発生しても、一般送配電事業者からの送電が直ちに停止することはない仕組みとすることによって、一定の需要家保護が確保されてきた。

 とはいえ、安易な参入(事業開始)や撤退は需要家や関連事業者にいらぬ混乱を招くおそれがあることから、これまでも小売登録審査においては、事業者の決算書類の提出を求めることにより、その財務健全性について一定の確認を行ってきた。

 これまでの審査では主に短期的な財務健全性を確認してきたが、近年の電力市場価格高騰等を踏まえ、今後は中期的な事業継続性についても確認することの重要性が高まっている。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.