洋上風力をめぐる入札制度の見直し、「迅速性評価」や“総取り防止”の仕組みを導入自然エネルギー(2/4 ページ)

» 2022年11月07日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

事業計画の迅速性を評価する仕組みを導入

 第2ラウンド公募では、2030年度エネルギーミックス目標の達成に資する観点から、事業計画における運転開始の迅速性を特に評価することとされた(20点満点)。

 すでに第1ラウンド公募の落札者による基地港湾の利用予定もあることから、「促進区域と一体的に利用できる港湾」の利用可能期間等を踏まえ、図3のような段階的な評価基準を設定することとした。

図3.事業計画の迅速性評価の基準 出所:洋上風力促進WG

 まず第1ラウンド公募の計画で得られた知見から、「想定される最速の運転開始時期」は基礎設置や風車据付等の標準的な海上施工期間等を考慮し、基地港湾の利用開始後2年9か月目に運転開始と想定する。

 この場合、例えば秋田港を基地港湾として利用する可能性のある「八峰町・能代市沖」、「男鹿市・潟上市・秋田市沖」において想定される最速の運転開始時期は、2027年12月と想定される。

 これにさらなる事業者の創意工夫(6か月)を考慮し、満点となる運転開始時期を区域ごとに設定し、「八峰町・能代市沖」、「男鹿市・潟上市・秋田市沖」においては、2027年6月以前の運転開始に対して満点(20点)が付与される。2031年4月以降の運開については、加点は0点となる。

 洋上風力発電のような大型プロジェクトでは数カ月程度の遅延は十分に起こり得ることであり、数カ月程度の運転開始予定日の差に評価上の差を設けることは合理的ではない。このため、段階的な評価基準(階段の幅)は、半年以上1年以内となるように設定する。

 なお事業計画の実現性の観点も考慮し、拙速な計画ではなく、より確からしい計画を高く評価するため、事業計画の実現性(基盤面・実行面)の合計点が5割未満の場合は0点として、5割以上の場合には、同合計点の評価点比率を乗じた値を事業計画の迅速性の評価点とする。

迅速性のペナルティ設定

 応札事業者は、計画上の運転開始予定日をより早く設定した場合のメリットが選定後の遅延によるデメリットを上回る場合、あらかじめ遅延することが分かっていながら、早めの運転開始予定日を提案するおそれがある。

 したがって事業者に適切な計画を作成・提案させるため、運転開始予定日から遅延した場合のディスインセンティブやペナルティを適切に設定する必要がある。

 このため、迅速性評価点が1段階以上下がる遅延が生じた場合、保証金を没収するものとする。第3次保証金は13,000円/kWであるため、仮に設備容量50万kWの場合、保証金は65億円となる。

 ただし激甚災害による被災や当事者のコントロール範囲外の事象等が生じた場合には、保証金の没収は免除される。なお、保証金の没収が65億円(50万kWの場合)とは大金である。

 仮にA社の真の運開予定日が2027年3月だとしても、4カ月程度の遅延は十分に起こり得ること(コントロール不能)ならば、A社は満点20点ではなく、2027年7月運開予定として15点を獲得する計画とすることも考えられる。

 平均的には、計画上の運開予定日を少し遅らせるインセンティブを与える仕組みであるように思われる。

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