洋上風力をめぐる入札制度の見直し、「迅速性評価」や“総取り防止”の仕組みを導入自然エネルギー(1/4 ページ)

国内における洋上風力発電の実施事業者を決める入札制度。2021年のいわゆる「第1ラウンド公募」の結果などを受け、その制度の見直しが進んでいる。政府では今後、入札を延期している3海域での入札について、事業の迅速性評価などの仕組みを導入した新たな公募占用指針の策定を行う計画だ。その方向性を解説する。

» 2022年11月07日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 洋上風力発電がまだ黎明期にある日本において、事業者をどのように公募選定すべきか――2021年のいわゆる「第1ラウンド公募」では、秋田県や千葉県の3区域のすべてを、三菱商事エナジーソリューションズを中心としたコンソーシアムが落札した。

 その後、ウクライナ危機を踏まえたエネルギーセキュリティ強化の観点から、10月には「一般海域における占用公募制度の運用指針」が改定された。「運用指針」とは、すべての公募区域に共通する事項について整理し、各区域の占用公募制度の具体的な運用方針を整理するものである。

 資源エネルギー庁の「洋上風力促進ワーキンググループ(WG)」と国土交通省の「洋上風力促進小委員会」の合同会議では、この新たな運用指針に基づき、これまで延期してきた「秋田県八峰町・能代市沖」区域、および2022年9月に促進区域に指定された「秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖」、「新潟県村上市・胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」の区域について、一つの公募占用指針として策定することした。

表1.洋上風力 促進区域の名称と発電設備容量 出所:洋上風力促進WG

なお、公募プロセスの全体像は図1のとおりである。

図1.洋上風力 公募プロセスの全体像 出所:洋上風力促進WG

見直し後の公募評価基準と配点のルール

 洋上風力海域利用の公募においては、国民負担の抑制と事業の確実な実施の両立が大原則であることから、「供給価格(120点)」と「事業実現性評価(120点)」の配点は従来どおり、1:1で評価することに変わりは無い。

 ただし、「事業計画の迅速性」など政策的に重要なポイントについて、評価の差異が鮮明に表れるように、図2のように事業実施能力の配点等や内容が見直された。

 また従来、供給価格点においては最高評価点者が必ず満点(120点)となる算出式であったのに対して、事業実現性評価では満点を取ることが困難な仕組みであった。

 このため今後は算出式を見直し、事業実現性評価においても最高評価点者が必ず満点(120点)となるよう点数の補正を行うこととした。算出式は以下のとおりである。

 事業実現性評価点=(提案者の評価点/公募参加者の最高評価点)×120点

図2.見直し後の公募評価基準と配点 出所:洋上風力促進WG

 なお供給価格点評価では、事業者が提案する基準価格が市場価格を十分に下回る一定価格「ゼロプレミアム水準(FIPによるプレミアム収入が0)」以下の場合は、一律120点として評価とする。

 具体的なゼロプレミアム水準の設定およびその事前の公表・非公表については、公募占用指針策定時に「調達価格等算定委員会」の意見を聴取して決定される。

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