日本の物価は過去30年、非常に安定的であったが、足元ではエネルギー価格を中心に様々な資源価格等が上昇しつつある。
本制度初年度に落札した電源であれば、一定の建設期間(例えば10年)の後、20年間の制度適用期間とは2033〜2053年にわたることとなる。このような遠い将来には、物価が大きく変動する可能性も高いと予想される。
ただし本制度では入札価格規律の観点から、入札価格に物価変動のリスクプレミアムは含まないこととしている。
一方で、物価変動に伴う事業採算性の不確実性が大きいことは、大規模な投資判断を躊躇(ちゅうちょ)させ、結果として脱炭素電源の新設が進まない恐れもある。
なお英国の容量市場制度では、新設電源に限って15年の長期契約が可能である。その英国では物価変動への対応として、落札電源の容量支払い価格は毎年、消費者物価指数(CPI)の補正が行われることとなっている。
よって、日本の長期脱炭素電源オークションも英国の制度を参考として、1年ごとに消費者物価指数(コアCPI)で物価補正を行うこととする。
長期脱炭素電源オークションは20年間にわたる大規模投資を求める制度であるため、応札する発電事業者の事業実施能力や事業継続の確実性を担保することが重要である。このため、入札者には一定の参加資格を設けることとする。
国内法人であることや反社会的勢力でないことなどが一般的な要件とされるほか、事業計画書や資金調達計画書の提出を求め、事業計画の具体性や資金的裏付けの有無を確認する。
また、事業継続の確実性を担保するための金銭的な方策として、事前に保証金等を支払わせる仕組みも考え得る。ただし現行容量市場では、発電事業者の参入を促す観点から、保証金は課さず、「市場退出時の経済的ペナルティ」が採用されている。
本制度は容量市場の特別オークションであることから、これと同じ考え方を採用し、具体的には「容量×調整係数×落札単価×10%」の金銭的ペナルティを課すこととする。
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