現行容量市場では「安定電源」・「変動電源」・「発動指令電源」の3つの登録区分があり、蓄電池は小規模設備がアグリゲートされることを想定し、「発動指令電源」に位置付けられている。
発動指令電源は、年間で最大12回の発動指令に応じることがリクワイアメントとされており、これに応じるためにスタンバイ状態を続けるならば、電力の需給バランスに応じて充放電を繰り返すという蓄電池本来の機能を発揮できない可能性もある。
なお英国の容量市場では、蓄電池は揚水発電所と共通の「Storage」として区分されている。
本制度で対象とする蓄電池は、1万kW以上の比較的規模の大きい設備であることや、蓄電池の本来の機能を適正に評価する観点から、本制度においては蓄電池を、揚水発電所と同様に「安定電源」に区分することとする。
これにより、調整係数についても揚水発電所と同じ係数が適用される。
本制度は容量市場の特別オークションであることから、原則として現行容量市場におけるリクワイアメント・ペナルティを適用した上で、本制度特有の追加的なリクワイアメント・ペナルティを設けることとしている。
例えば既設化石燃料火力をバイオマス専焼化するための改修案件については、その燃料は当初は最低でも年間70%の混焼率(熱量ベース)をリクワイアメントとして求めることとしており、2050年までにバイオマス専焼化していくことが義務となる(設備は当初から専焼対応が必須)。
この専焼化が実現しない場合は、重大な契約違反に該当するとして、契約解除の対象となる。
水素・アンモニアに関しては技術的難易度が高いため、発電設備に関しては混焼率を水素で10%、アンモニアで20%を求めることとする。
この設備に対して脱炭素燃料の混焼率70%を求めることにより、熱量ベースの混焼率は水素で7%、アンモニアで14%以上がリクワイアメントとされる。
ただし、水素・アンモニアの黎明期には燃料はすべて長期契約によって確保することが想定され、燃料のスポット市場は存在しないと考えられる。このため水素・アンモニアの短期的な追加調達は困難であるため、場合によっては混焼率が低下することも起こり得る。
年間最低混焼率を達成できない場合は、ペナルティとして、表3のように年間の容量確保契約金額の支払額が1割もしくは2割減額される。
なお、天変地異など事業者に帰責性がない不可抗力によるリクワイアメント違反が生じた場合は、ペナルティは免除される。
事業リスクを過度に大きなものとせず、予見性を高めることは適切なファイナンスの確保に有益であると考えられる。これは事業総額の抑制、ひいては国民負担の抑制につながることから、使いやすい制度であることが期待される。
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