特有ルールが満載の「長期脱炭素電源オークション」、入札ルールの詳細は?エネルギー管理(3/4 ページ)

» 2022年11月09日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

スクラップ&ビルドで建て替える場合には特例措置

 本制度においては、既設の化石燃料火力を水素・アンモニア「混焼」にするための改修案件も応札・落札が可能である。ただし将来的には、混焼ではなく「専焼」化が求められるため、専焼化するための「建て替え」が発生すると考えられる。

図2.水素・アンモニアの専焼化に向けた建て替えの例 出所:制度検討作業部会

 既設の混焼電源(図2のB号機)を使い続けるのではなく、早期に専焼電源(C号機)の新設を促す観点から、C号機の運転開始に伴いB号機を除却する場合も、B号機投資額の未回収分については残りの制度適用期間にわたって、発電事業者に対して支払うこととする。これはいわゆる「ビルド&スクラップ」の順で建て替えるケースである。

 他方、発電所の立地制約等により、「スクラップ&ビルド」(旧電源の撤去&新電源の建設)の順でなければ専焼設備の建設ができない場合もあり得る。このように撤去が先行する場合、一定の供給力が失われることが問題となる。

 この問題は、現行の容量市場による調達量を増加させることにより、対処可能である。ただし、容量市場は4年後の供給力を受け渡す仕組みであるため、空白期間を生じさせないためには、B電源に4年間の供給力提供継続を義務付けることとする。

再エネ電源の上限価格は?

 長期脱炭素電源オークションでは国民負担の抑制を図る観点から、上限価格を設定することが予定されているが、これは一律ではなく電源種ごとに設定されるものである。

具体的な上限価格は発電コスト検証の数値をベースとして、入札時に決定されるが、個別の上限価格が過度に高いものとならないよう、10万円/kW/年が閾値として示されている。

 ところが一部の再エネ電源に関しては、再エネ価格目標を元に試算したFIT/FIP制度の入札上限価格のほうが本制度の上限価格を下回ると試算されている(※FIT/FIP制度を適用しない再エネ電源は本制度に参加可能)。

図3.FIT/FIP再エネの上限価格と本制度の上限価格 出所:制度検討作業部会

 よって本制度の上限価格は、再エネのコスト低減インセンティブを削がない方法で設定する必要がある。

 通常、FIT/FIP制度の上限価格は毎年低減されるため、FIT/FIP制度の翌年度(X+1年度)の上限価格をベースに、本制度の当該年度(X年度)の上限価格を設定することとする。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.