「水素・アンモニア」の低炭素基準を設定へ――どこからグリーン・ブルーなのかエネルギー管理(2/4 ページ)

» 2022年11月24日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

水素バリューチェーン推進協議会による低炭素水素基準案

 水素はグリーン水素、ブルー水素、グレー水素に大別されるが、現時点、商業ベースで大量にブルー水素を製造するためには、天然ガスを原料として「水蒸気改質(SMR)」技術を用いることが一般的と考えられる。

 この方式の場合、12.4 kgCO2e/kgH2のCO2を排出すると試算されている。

 水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)では、これをベースラインとして約7割削減に相当する3.4kgCO2e/kgH2を、日本の低炭素水素基準とすることを提案している。

 この削減のためには、改質工程から排出されるCO2を96%回収し貯留(CCS)することや再エネ電力の使用等が必要とされる。

図2.天然ガスSMRからの7割削減イメージ 出所:水素バリューチェーン推進協議会

 この3.4kgCO2e/kgH2はEU REDと同等の数値であり、現時点では国際的にも遜色のない水準であるものの、海外では基準値のさらなる強化も予定されていることから、JH2Aでは5年以内に基準値を見直すことを表明している。

アンモニアの低炭素基準

 アンモニアの製造においても、化石燃料に由来するブルーと、再エネ電力に由来するグリーンな案件がある。図3上段のブルーアンモニアの場合、水素を得る工程とアンモニア合成の工程が不可分一体のものとなっている。

図3.脱炭素アンモニア製造方法の例 出所:クリーン燃料アンモニア協会

 クリーン燃料アンモニア協会では輸入ブルーアンモニアの当面の低炭素基準として、0.84t-CO2e/t-NH3以下とすることを提案している。この0.84tは、天然ガスSMR方式の排出量と比較すると、60%以上のCO2削減となる。

 ただし現時点、天然ガスの生産から供給までのCO2排出量データが十分把握できていないため、算定範囲を「Gate to Gate」(原料天然ガス受入からアンモニア合成まで)としている。

 将来的には算定範囲を「Well to Gate」(天然ガスの生産供給からアンモニア合成まで)としたうえで、より高いCO2削減率(70%以上)に見合った基準値に見直すことを提案している。

 また当面のCO2削減方法はCCS(もしくはEOR)に限定されるが、将来的にはカーボンオフセットやCCU等も検討すると表明している。

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