開始が近づく企業の排出量取引制度「GX-ETS」、第1フェーズのルールを解説エネルギー管理(2/4 ページ)

» 2023年02月17日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

GX-ETSのプレッジ(自主目標の設定)

 GX-ETSの参画企業はまず、国内の直接排出・間接排出それぞれについて、2030年度および中間目標としての2025年度の排出削減目標を自主的に設定する。排出削減目標は図2下線部のように、排出量・削減率・削減量の3つである。さらに、第1フェーズ(2023〜2025年度)の排出量合計の目標値を自主的に設定する。

 この3年間合計の目標排出量と実績排出量を比較することにより、第1フェーズ自主目標の達成の成否が判断される。

 GX-ETSにおいて基準年度は、国のNDC(国が決定する貢献)と同じく、原則2013年度とする。ただし参画企業の状況等により、2014〜2021年度の間での連続する3カ年平均値も選択可能である。

図2.自主目標の設定イメージ 出所:GXリーグ事務局

 また参画企業はこれらGX-ETS目標値のほか、2050年カーボンニュートラル達成に向けた「トランジション戦略」の作成・公表が求められる。トランジション戦略には、カーボンニュートラル達成目標年度やこの達成に向けて期限を定めた具体的施策、これら戦略を実行するためのガバナンス体制を含むものとする。

 参画企業はGX-ETS目標値やトランジション戦略を、GXリーグの情報開示プラットフォームである「GXダッシュボード」において公表する。

GX-ETSにおける排出量の算定・モニタリング・報告の仕組み

 GX-ETSにおいて、国内直接排出量の算定方法は原則、温対法に基づくSHK制度(算定・報告・公表制度)を参照している。

 ただしGX-ETSでは、他者に電気や熱を供給した分の燃料の使用に伴う排出量も自社の直接排出として算定・報告するなど、SHK制度と異なる点も幾つか存在する。なおGX-ETSにおいて間接排出とは、エネルギー起源間接排出、いわゆるスコープ2を指している。

図3.他者供給分の電力・熱についての直接排出の考え方 出所:GXリーグ事務局

 またGXリーグには、国際的な算定基準である「GHGプロトコル」に基づき目標値や実績値を算定している企業も多数賛同している。このため、GHGプロトコル算定データの一部の変換・補足により、GHGプロトコルに基づく算定も認めるよう配慮する。

 GX-ETSのモニタリング・報告は、過去に政府が実施した類似の取り組み(環境省「JVETS」や経済産業省等による「試行的実施」)での手法を基礎として、今後「基準年度排出量算定ガイドライン」、「算定・モニタリング・報告ガイドライン」、「第三者検証ガイドライン」を策定する予定である。

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