東京都の太陽光発電“設置義務化”を完全解説、「建築物環境報告書制度」のポイント2025年4月から施行(4/5 ページ)

» 2023年03月15日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

太陽光発電による経済的メリット

 都条例による義務的制度とはいえ、施主(一般消費者)に十分なメリットが無ければ、太陽光発電の普及拡大は困難である。このため、都は一定の前提条件のもとで、住宅に太陽光発電設備を設置することの経済性を試算している。

試算条件

  • 4kW設置初期費用:98万円
  • 現行の補助制度:10万円/kW
  • 売電単価:17円/kWh(FIT制度10年間)、8.5円/kWh(11〜30年)
  • 電気料金:33円/kWh(2022年5月実績)

 この場合、30年間で119万円(補助金ありでは159万円)のメリット、20年間で45万円(補助金ありでは85万円)のメリットが得られる試算結果となった。初期費用の回収期間は10年間(補助金ありでは6年)程度である。

図5.太陽光パネル設置の経済性試算 出所:東京都

断熱・省エネ性能の基準の新設

 都の建築物環境報告書制度は、太陽光発電導入だけでなく、建築物そのものの断熱・省エネ性能の向上を図っている。

 国は2025年度に、建築物省エネ法に基づく断熱・省エネ基準の適合義務化を、住宅を含むすべての建築物に拡大して実施予定であるが、都の基準は、国の住宅トップランナー制度(TR)を基に設定している。

 また国の法令では全国平均で達成すればよいのに対して、都の制度では当然ながら、都内に供給した建築物の平均で達成が必要である。なお断熱・省エネ性能の向上により、施主にも十分な経済的メリットが得られることが一定の前提条件の基に試算されている。

表4.断熱・省エネ性能基準 出所:東京都

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.