都市ガスの脱炭素化へ新制度、合成メタン用の「クリーンガス証書」を創出へメタネーションの普及へ(1/4 ページ)

都市ガス領域の脱炭素化に向けて、いわゆる「メタネーション」とよばれる合成メタンの活用が模索されている。合成メタンの流通おいては、環境価値の帰属・移転の問題があるが、その解決策として「クリーンガス証書」の創設が検討されている。

» 2023年03月24日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラル実現に向けて、電化が困難な分野では、ガス体エネルギーの脱炭素化が求められている。資源エネルギー庁の「ガス事業制度検討ワーキンググループ(WG)」において、都市ガスのカーボンニュートラル化の手段としては、供給するガス種の変更を伴うものと、カーボンニュートラル化に資する手立てによるものが存在する、と整理されている。

表1.都市ガスのカーボンニュートラル化の手段 出所:ガス事業制度検討WG

 これらの手段は、技術の成熟度や経済性、需要家の選好等により、今後、選択・棲み分けが進むと考えられる。このためWGでは、現時点で選択肢を狭めることなく、制度面や規制、経済的インセンティブ、支援策等の観点から、それぞれの導入促進策を検討することとしている。

合成メタンの技術的バリエーション

 現在、都市ガスの主成分はメタンであり、メタン(CH4)は水素(H)と炭素(C)から組成されている。人工的に水素と炭素を合成することをメタネーションと呼び、これにより生成したガスを「合成メタン」と呼んでいる。

 合成メタンを製造するためには水素が不可欠となるが、再エネ等に由来する水素を利用した合成メタンを特に「e-methane(イーメタン)」と呼び、水素利用の一形態として推進している。

 合成メタンを製造するメタネーションの方法としては、化学反応によるものと生物反応によるものに大別される。

 化学反応によるメタネーションとしては、現在「サバティエ反応」によるものが一般的であり、水素とCO2から触媒反応によりメタンを合成する(CO2+4H2 → CH4+2H2O)。サバティエ反応メタネーションはすでに実用化されており、現在、大規模化とコストダウンに向けた技術開発が進められている。

図1.サバティエ反応メタネーション 出所:大阪ガス

 これに対して、表2のように「革新的メタネーション」と呼ばれる複数の技術が、各社により開発中である。

 従来型のサバティエ方式では、合成メタンの原料として「水素とCO2」を使用するのに対して、革新的メタネーションでは外部からの水素調達を不要として、「水とCO2」を原料とした一貫プロセスによる高効率化を図ることが特徴である。

表2.代表的なメタネーション技術の比較 出所:ガス事業制度検討WG

 詳細技術は各社により異なるが、大阪ガスによる革新技術(SOECメタネーション)では、メタン化反応装置で生じた熱をプロセス内で有効利用するなどにより、総合エネルギー効率85〜90%の実現を目指している。なお、SOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell:固体酸化物を用いた電気分解素子)は、家庭用燃料電池エネファームのSOFC(Solid Oxide Fuel Cell:固体酸化物型燃料電池)の逆反応を利用した技術である。

図2.革新技術メタネーションの一例 出所:大阪ガス

 サバティエ・メタネーションは現在、生産能力400〜500Nm3/hの技術を開発中であり、2030年代に数万Nm3/hの大量生産技術の実現を目指している。また革新的メタネーションは現時点では実験室レベルの段階であるが、2040年代に1万Nm3/h以上の大量生産技術の実現を目指している。

図3.メタネーション技術開発ロードマップ 出所:ガス事業制度検討WG
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