都市ガスの脱炭素化へ新制度、合成メタン用の「クリーンガス証書」を創出へメタネーションの普及へ(2/4 ページ)

» 2023年03月24日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

生物反応によるメタネーション(バイオガス・バイオメタン)

 「バイオガス」とは、下水汚泥や生ごみ、家畜糞尿、エネルギー作物などのバイオマスに由来し、微生物によるメタン発酵により発生するガスである。バイオガス成分の約6割がメタン、約4割がCO2であり、シロキサン等の不純物も含まれる。

 このバイオガスを原料として、CO2等を除去してメタンの純度を高めたものが「バイオメタン」と呼ばれる。また、バイオガス中のCO2を原料として、外部調達した水素と合成することによりバイオメタンを製造する方法もある。

 バイオガスはすでに都市ガスの一部として使用されており、エネルギー供給高度化法においてガス事業者は、その供給区域内の余剰バイオガスの80%以上を利用することが目標として定められている。

 バイオガス・バイオメタンの利用は海外でも拡大しており、IEA(国際エネルギー機関)によれば、世界のバイオメタン生産量は、ヨーロッパと北アメリカを中心として、2025年に100億m3に達する見通しとされている。

図4.世界のバイオメタン生産の見通し(10億m3) 出所:IEA

 欧州は、天然ガスのロシア依存解消のため、「REPowerEU」計画を策定し、従前の温室効果ガス排出削減計画「Fit for 55」と合わせて、2030年までに350億m3のバイオメタンを生産する目標を掲げている。これは日本全体の都市ガス販売量約400億m3に匹敵する規模である。

 一般的にサバティエなど化学反応によるメタネーションは1つのプラント規模が大きいのに対して、バイオメタネーションでは、小規模なプラントを多数設置することが想定される。欧州の現在のバイオメタン生産量は30億m3であり、これを350億m3に拡大するためには、約800億ユーロの投資を行い、約5,000の新規のバイオメタンプラントを建設する予定である。

合成メタンの目標価格

 合成メタンの製造コストの内訳は、水素製造・電力コストが過半を占めているため、合成メタンのコスト抑制のためには、海外を含めた再エネ電力コストが最小となる製造適地の選定が最も重要となる。また、革新的技術によるメタネーション効率の向上、プラントの大規模化も合わせて、合成メタン製造コストを2030年に120円/Nm3、2050年に50円/Nm3(CIF価格)とすることを目標としている。

図5.合成メタン製造コストの低減イメージ 出所:日本ガス協会

 この合成メタンの目標価格を、従来のLNG輸入価格や、都市ガス販売額(家庭用・商業用・工業用)と比較したものが、図6である。元々、合成メタン目標価格は、従来の化石燃料価格と比べて遜色ない水準として設定されたものであるが、ウクライナ危機以降、LNG輸入価格および都市ガス販売額は急騰しているため、仮にこの状態が続くならば、合成メタンは十分に価格競争力を持つと予想される。

図6.LNG価格・都市ガス販売額、合成メタン目標価格 出所:ガス事業制度検討WG

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.