都市ガスの脱炭素化へ新制度、合成メタン用の「クリーンガス証書」を創出へメタネーションの普及へ(3/4 ページ)

» 2023年03月24日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

合成メタン製造・利用に係るCO2排出の取り扱い

 合成メタン(CH4)は、通常のメタンと同様に炭素Cを含むことから、その燃焼時にはCO2を排出することとなる。他方、合成メタンを製造するためには、事前に何らかの方法でCO2(炭素C)を回収しており、炭素の循環が生じているため、単純な化石燃料の燃焼とは大きく異なるものである。これは合成メタンに限らず、カーボンリサイクル燃料全般に共通する特徴であり、合成メタンの製造・利用に係るCO2排出の取り扱いの整理が重要となる。

 また合成メタンは、従来のLNGのように国をまたいだ輸出入が可能であるため、大別すると「国レベル」の論点と、「企業活動レベル」の論点が存在する。

「国レベル」の論点

 合成メタンは比較的新しい概念・燃料であるため、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のガイドラインでは、合成メタン等のカーボンリサイクル燃料を、国を跨いで生産・利用する場合のCO2の計上方法がまだ明確化されていない。

 日本国内でメタネーションを行う場合、合成メタンの製造に伴うCO2回収と合成メタンの燃焼に伴うCO2排出が、いずれも日本国内で生じることとなる。このため日本国全体としての温室効果ガス(GHG)排出量に変動は生じないため、国家インベントリやNDC(国が決定する貢献)に影響は与えない。

 他方、海外でメタネーションを行う場合、CO2の回収は合成メタン製造国で生じ、CO2の排出は合成メタン利用国(日本)で生じることとなる。

図7.海外メタネーションにおけるCO2の回収と排出 出所:ガス事業制度検討WG

 仮にIPCCガイドラインの改定を望むならば、国連の場で多国間の交渉が必要となる。他方、A国で回収したCO2の削減量を何らかの環境価値として取り扱うならば、二国間での同意により、環境価値の移転等を行う可能性もある。この場合、二国間クレジット制度(JCM)の活用が想定される。

「企業活動レベル」の論点

 日本国内を見ても、GHG排出量に関係する制度は複数存在する。その根源には、温対法に基づくGHG算定・報告・公表制度があるが、現時点、合成メタンを始めとするCCUの取り扱いは明確化されておらず、2023年度の検討課題とされている。

 なお、「メタネーション推進官民協議会 CO2カウントに関するタスクフォース」による「合成メタン利用の燃焼時のCO2カウントに関する中間整理」においては、排出削減の二重カウントを認めないことを前提として、図8の案1を基に各種国内制度の検討が進められることが望ましい、と取りまとめている。(CO2の原排出者側(回収側)にCO2排出を計上し、利用側についてはCO2排出をゼロとする考え方)

図8.合成メタンの製造・利用に係るCO2排出の取扱い案 出所:合成メタン利用の燃焼時のCO2カウントに関する中間整理

 案1に対しては強い反対論もあるものの、環境価値(CO2ゼロエミ価値)を適切に移転する仕組み(取引制度)を整備するならば、初期配分がどのようなかたちであったとしても(二重計上は無い前提)、環境価値の行使や実質的な総合費用には違いは生じないと考えられる。(基礎排出量もしくは調整後排出量のいずれに表れるか、の違いのみ)

 また、GXリーグの排出量取引制度であるGX-ETSが2023年4月から開始されるが、合成メタン製造のために回収したCO2や合成メタン燃焼に伴うCO2排出量が、GX-ETS参加事業者のスコープ1排出量において、どのように取り扱われるか未定である。J-クレジット制度における、クレジット創出の是非についても検討が必要となる。

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