販売・賃貸も表示対象に、建築物の新たな「省エネ性能表示制度」のポイント2024年4月にスタート(1/4 ページ)

建築物省エネ法の改正によって、2025年から原則すべての新築住宅・建築物(非住宅)において、省エネ基準への適合が義務付けられることとなった。それに合わせて、建築物の省エネ性能表示制度も刷新される。このほどその新たなラベリング制度の概要が取りまとめられた。

» 2023年03月27日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 2050年カーボンニュートラル、2030年温室効果ガス46%削減の実現に向けて、2022年6月に建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)が改正され、原則すべての新築住宅・建築物(非住宅)において、省エネ基準への適合が義務付けられることとなった(2025年施行)。

図1.省エネ基準適合の義務化 出所:国土交通省

 また、第6次エネルギー基本計画においては、2050年に住宅・建築物のストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保されていることを目指している。2030年度以降の新築について、ZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保のため、遅くとも2030年度までに省エネ基準の引き上げが予定されている。

 他方、2019年度時点のZEH・ZEB水準の省エネ性能への適合率は、住宅で14%、非住宅建築物で26%に留まる。このため改正法では、消費者等がより積極的に省エネ性能に優れた住宅等を選択することを促す観点から、建築物の省エネ性能表示制度が強化された。

 これにより、2024年4月以降、建築物の販売・賃貸を行う事業者は、全ての建築物(販売・賃貸が行われるもの)を対象として、省エネ性能を表示することが求められる。

 このため、国土交通省は「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会」を設置し、具体的な表示事項や表示方法等の検討を行ってきたが、2023年3月にその取りまとめが公表された。

表示ルールに関する「告示」と「ガイドライン」

 現行の建築物省エネ法においても、省エネ性能の表示は事業者の努力義務とされているが、今般の法改正により、事業者が告示に従って表示をしていない場合(または表示を全く行っていない場合)、国土交通大臣は「勧告」や「命令」ができるようになり、法の実効性が強化された。

 このように、告示違反は勧告等の対象となるため、告示では、必要度の高い表示事項・表示方法等が定められる。これに対してガイドラインでは、追加的な情報提供などの望ましい行為が示される。

 また検討会では、本制度を一般の消費者等へ広く普及させる観点から、一部の販売・賃貸事業者しか取り組めないようなハードルの高い制度とするのではなく、消費者等にとって分かりやすく、販売・賃貸事業者にとって取り組みやすい、実現可能な省エネ性能表示の仕組みとするよう検討が行われた。

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