広告等に表示するラベルは、サイズの制約があることから詳細な情報を掲載することには適さない。よって消費者等に対する追加的な情報提供は、ガイドラインで定める「建築物のエネルギー消費性能の評価書」において行うこととする。
「評価書」においては、BEIの具体値や省エネ基準からの削減率、外皮性能に関する具体的な性能値(住宅:UA値、ηAC値、非住宅:BPI値)等を記載する。なお、再エネ設備を設置している場合、一次エネルギー消費量の性能については、
この3つの算出ケースがあることから、それぞれの数値を示すこととする。
評価書は、販売・賃貸事業者が自ら作成することを可能とするが、情報の客観性を高めるため、第三者評価の取得を推奨している。
既存建築物の一部には、長期優良住宅・低炭素建築物の認定や「BELS」を取得した物件もあるものの、多くの既存建築物は、建築時に省エネ性能を評価せずに建築されたと考えられる。既存建築物の省エネ性能評価には一定のコスト・期間を要するため、全ての物件にこれを求めることは事業者の負担が多大となるため、代替措置について検討がされた。
まず非住宅建築物については、省エネ法に基づく貸事務所業のベンチマーク制度を参考として、運用段階の実績値等に基づく表示を検討する。また住宅については、高断熱窓や高効率給湯機への改修を行っている場合に、断熱や設備の部分的な仕様等に基づく表示の在り方を検討する。
東京都や大阪府など複数の地方自治体において、大規模建築物を対象とした省エネ・環境性能表示関連の表示ラベルがすでに運用されている。国による新しいラベルと自治体によるラベルが一つの広告内に併存する場合の混乱を避けるため、国は今後、自治体等関係者と調整を行う予定としている。
また建築物の販売・賃貸事業者が、消費者等に建築物の省エネ性能を伝達するルートは、多種多様なものがある。中小事業者を含めた幅広い事業者が本制度に対応できるよう、国は、省エネ性能表示に係る具体的な手順等をガイドラインに示す予定である。
リクルート社の調査によると、省エネ性能が高いと考えられる新築戸建住宅(太陽光発電、認定低炭素住宅、省エネ給湯器、いずれかを満たす)の問い合わせ率は、そうでない物件の1.9倍に上り、すでに一般消費者の関心は高まっていると考えられる。
本制度は事業者の努力義務に基づくものであるが、事業者と消費者双方にとってメリットのある、分かりやすい表示制度とすることが期待される。
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