高度化法では、制度対象となる小売電気事業者(特定エネルギー供給事業者)において、非化石エネルギー源の利用の適確な実施を確保するため必要があると認めるとき(つまり、中間目標が未達成のとき)、経済産業大臣は、「指導」および「助言」を行うことができる。
また、著しく不十分である場合、経産大臣は当該報告対象事業者に対し、非化石エネルギー源の利用に関し必要な措置をとるべき旨の「勧告」をすることができるとしており、勧告に従わない場合は、「命令」へと進む。命令に違反した場合には罰金(百万円以下)に処するとしている。
さらに、目標達成事業者と未達成事業者の社名のほか、その未達率についても公表することにより、目標達成を促すこととしている。
他方、証書の購入努力をしながらも、証書の需給逼迫により証書が購入できず、目標未達成となることも考えられる。
このような場合には配慮措置として、公表の際に「未達成」に分類した上で、証書の需給バランスが著しく悪化したためやむを得ず未達になった旨を、表4のように注記するとともに、指導・助言の対象外とする。
このような注記があったとしても、脱炭素に対して後ろ向きな会社との印象を需要家に与えるのではないかとの懸念が、一部の小売電気事業者から表明されている。
そもそも、なぜこのような証書の需給逼迫が生じたのだろうか。2022年度の中間目標における外部調達比率は「7.5%」と決められている。この中間目標の設定において、非化石証書の総供給量は、その時点での最新の2021年度供給計画に基づき、約2,500億kWh(FIT証書含む)と想定されている。
ここから、旧一電の内部取引想定量や、FIT想定量を差し引いて、市場や相対取引に供出されうる証書量は約775億kWhと試算された。
また同じく2021年度供給計画から、2022年度電力需要量は約8,700億kWhと想定された。外部への証書供出量約775億kWhに、2割程度の余裕率を持たせた約651億kWhを外部調達義務量として、需要約8,700億kWhに対する2022年度の外部調達比率は「7.5%」と決定された。
ところが、第1フェーズは3カ年で目標を達成すればよい仕組みであるため、2020年度には200億kWh程度の未調達が生じていた。この未調達分はあらかじめ認識されていたものの、2022年度目標が設定される前の2021年度時点で解消されることを前提として、目標値設定において特段の考慮はされなかった。
2022年度の突然の需給逼迫は、この未調達分が遅れて調達されたためと推測される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.