非FIT非化石証書が取引市場で“売り切れ”に、その背景と今後の市場取引の展望小売電気事業者の非化石電源比率義務にも影響(4/4 ページ)

» 2023年04月12日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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証書の需給緩和策を検討へ

 上記アンケートによれば、2022年度の証書の追加的需要は200億kWh程度であるのに対して、供給余力は20億kWh程度であり、このままでは多くの小売電気事業者が目標未達成となることが懸念される。

 このため資源エネルギー庁では、「1.証書の需要を減らす」「2.証書の供給を増やす」という2つの方向から、証書の需給緩和策について検討を行った。

 需要を減らす方策としては、2022年度の外部調達義務量を引き下げることが一案である。しかしながら、年度途中の義務量の引き下げは、すでに義務量を調達した事業者との公平性の観点で問題があるほか、第2フェーズ以降の制度の予見可能性を大きく損なうこととなる。

 なお、義務量を引き下げた上で、これにより超過達成となる小売電気事業者に超過分の売却を認めるということも論理的にはあり得るが、本制度では証書の転売を認めていないため、短期的にはこの方策は取り得ない。

 供給を増やす方策としては、非化石電源の発電量を突然増やすことは出来ないため、何らかの方法で仮想的な証書を創出せざるを得ない。新たな概念としての「証書相当枠」が例示されているが、その具体的な内容は説明されていない。

 いずれにせよ、次回オークションが来月に迫る中、現行制度が予定しない「新たな供給」を創出することは現実的ではない、と結論付けられている。

第2フェーズ 2023年度以降の対応

 第1フェーズでは3カ年評価であったことが今回の需給逼迫の一因であったが、第2フェーズ2023年度以降は、評価を毎年行うことに変更されることがすでに決定している。

 このため、現状よりは需給逼迫の可能性は低いものの、年度内であっても、相対取引次第では、証書の外部供出量が突然減少することは起こり得る。

 資源エネルギー庁では、今後、証書取引の実態をよりタイムリーに把握するため、事業者に対して、四半期ごとに報告を求めることとする。ただし、事業者の負担に配慮して、2023年度については義務化せず、自発的な協力を求めることから開始する。あわせて、半年に1回、アンケート調査を実施する。

 証書の需給状況を定期的に公表すること自体は、重要な取組ではあるものの、大規模な社内取引や社外との相対取引が終了した後で公開されても、後の祭りということもあり得るだろう。証書販売のスケジュールをあらかじめ公開したうえで、内外無差別な取引を行うことが期待される。

 2024年度以降、容量市場による供給力の受け渡しと支払いが開始される。集中型市場である容量市場では、小売電気事業者は同じ単価の容量拠出金を支払い、等しく、供給力を確保することが可能である(供給力確保未達という事態は原則生じない)。

 これに対して、分散型市場である非化石証書制度では、未達が起こり得ると同時に、未達が許容されていると言える。

 排出量取引制度GX-ETSや炭素賦課金など、さまざまな新制度が予定されているが、非化石証書制度についても、抜本的に見直すことも一案であろう。

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