現在、JEPXの「高度化法義務達成市場」において取引されている非FIT非化石証書。2022年度第3回オークションでは需給バランスが逼迫し、約定価格は初めて上限価格に達した。その背景の詳細と、今後の同証書の取引に関する施策についての見通しをまとめた。
エネルギー供給構造高度化法(高度化法)のもと、年間販売電力量が5億kWh以上の小売電気事業者は、2030年度に非化石電源比率44%の達成が求められている。このため対象事業者は、相対取引もしくは市場取引を通じて、一定量の非FIT非化石証書を調達する必要がある。
2022年度は高度化法の第1フェーズ(2020〜2022年度)の最終年度であり、対象事業者は3カ年平均で中間目標達成の可否が判断される。
現在、FIT非化石証書はJEPXの「再エネ価値取引市場」において、また非FIT非化石証書はJEPXの「高度化法義務達成市場」において、別々に取引が行われている。
2023年2月に行われた高度化法義務達成市場における2022年度第3回オークションでは、買い入札量が増加する一方、売り入札量はごくわずかであったため、約定価格は初めて上限価格(1.3円/kWh)となった。
2023年5月に行われる2022年度第4回オークションは、第1フェーズの最終オークションとなるが、ここでも売り入札量の大幅減少が懸念されている。
このため資源エネルギー庁は、現在の非化石証書調達環境や証書の供出余力を確認するため、対象事業者59者および非化石証書の売り手(旧一電各社と電源開発)に対し、緊急アンケートを実施した。対象事業者の回答数は50者である。
なお現在、非FIT非化石証書のみが高度化法目標達成に使用可能であるため、本稿では非FIT非化石証書を「証書」と略して表す。
図2は、証書の買い手(小売電気事業者)に対するアンケートの結果である。
右円グラフは、市場取引(2022年度第1回〜第3回)と、相対取引(2023年2月末まで)の合計量実績である。昨年9月のアンケートにおける2022年度の外部調達の見込み量と比べると、相対取引が大きく増加したほか、全体量としても約4割(165億kWh)増加している。
小売電気事業者に対するアンケートでは、発電事業者と相対交渉を実施したが売り玉がなく証書を販売してもらえない、今までの相対取引先が今年度の取引を終了している、などの回答が寄せられている。
また、証書の売り手である発電事業者(旧一電と電源開発)に対するアンケートでは、社内取引によりオークションに供出可能な証書がない、との回答や、相対取引によりほぼ全量を販売済みとの回答が寄せられている。
以上より、2022年度証書の大半は、売り手(旧一電等)の社内取引や他社との相対取引によって、すでに売却済みであったため、市場(第3回オークション)への供出量がわずかであったことが確認された。
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