カーボンニュートラルの実現に寄与する次世代技術として注目されている「カーボンリサイクル」。本連載ではこのカーボンリサイクルについて、欧米の先進事例を紹介しながら、日本の現状と今後の課題について解説する。最終回の今回は、カーボンリサイクルの普及拡大に向けた主要国・地域の取り組みと、日本のカーボンリサイクルの未来を考察していく。
第2回はカーボンリサイクルの実現を支える重要技術と、米中の先進事例を紹介した。最終回となる今回は、欧米中のカーボンリサイクル産業関連施策とルールメイキング、エコシステム形成の状況を紹介しながら、日本市場の現状と課題、日本企業のビジネス機会について紹介したい。
第1回で述べてきたとおり、カーボンリサイクルは日本のカーボンニュートラル達成における重要なテクノロジーの一つである。カーボンリサイクルを発展させていく上では、民間企業の努力だけでは難しく、政府からの支援やルールメイキング、エコシステムの形成も欠かせない。
そこで、まずはカーボンリサイクルの先進国である米国、欧州、中国におけるカーボンニュートラルに関する政策の変遷と、カーボンリサイクル関連の主要支援施策を見ていきたい。
米国のオバマ政権(当時)は2016年11月発効されたパリ協定に署名し、「2025年までに2005年比で26〜28%削減」というGHG排出量削減目標を掲げた。しかしトランプ政権に変わると一転、前政権が策定した温暖化対策の大幅な見直しを行った。結果、2020年11月にはパリ協定を離脱し、化石燃料分野の規制緩和や原油パイプラインの建設等を推進した。その後バイデン政権はパリ協定への復帰を表明し、「2050年カーボンニュートラル実現」を目標として掲げ、脱炭素化に向けた政策を今後進めていく方針を示している。
2022年8月、バイデン大統領署名によりインフレ抑制法(Inflation Reduction Act of 2022)が成立した。同法では再生可能エネルギーの導入促進、EV技術の導入促進など、気候/エネルギー関連規定が記載されており、前例のない約3,910億ドルもの大規模投資が示された。
税額控除に関しても「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収/貯留)」は$50/tCO2から$85/tCO2と控除額を増加、「DAC(Direct Air Capture:直接空気回収)+CCS」は180/tCO2、「DAC+CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:二酸化炭素の回収と有効利用」は$130/tCO2と控除項目が新設された。
筆者らがまとめた米国のカーボンリサイクル関連主要施策の概要を図1に示す。米国は税金優遇(税額控除)から、技術の研究開発/実証、人材雇用までCCUS産業の全体支援を行っており、カーボンニュートラル実現に向けた気候/エネルギー関連政策の中でも、CCUS産業が重要かつ不可欠であると考えていることが見てとれる。
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