規制は強まるのか? 営農型太陽光発電をめぐる国内の規制動向ソーラーシェアリング入門(60)(2/2 ページ)

» 2023年05月01日 07時00分 公開
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営農型太陽光発電をめぐる規制強化の議論

 営農型太陽光発電をめぐる制度議論を振り返ると、2022年2月に今後の望ましい営農型太陽光発電のあり方を検討する有識者会議が、農林水産省で2回にわたって開催され、私も有識者の1人として参加しました。その時の様子は過去に記事としてまとめていますが、営農型太陽光発電に関する課題と展望の整理が行われました。

 その後、前述した農地法制の在り方に関する研究会が開催されるようになり、2023年3月10日には自民党内で営農型太陽光発電に関するプロジェクトチームが発足しました。ここでは、不適切な営農状況の事例が増えるなかで、望ましい営農型太陽光発電の在り方について考えをまとめていくとしています。

 私も、4月に開催されたPT会合で農業者・発電事業者の立場から営農型太陽光発電の現状をお話ししてきましたが、その規制のあり方については農業振興や農業・農村の脱炭素化、気候変動への適応、地域の再生可能エネルギー電源としての活用など幅広い視点から取り組む必要がある旨を説明しました。

 他にも、今年の通常国会では各委員会で営農型太陽光発電が以前にも増してテーマとして取り上げられており、政府側の答弁の中では営農型太陽光発電の不適切な事例の増加と、規制の必要性が述べられる機会も増えています。

規制強化と同時に議論すべきポイント

 農業と共存する再生可能エネルギーである営農型太陽光発電の趣旨から逸脱し、発電事業を優先しその範囲で農業生産を行うという事例が増えつつあるなかでは、一定の規制を設けていくこともやむを得ないと言えます。

 FIT制度下で農地転用の抜け穴として営農型太陽光発電を利用する動きがあることは疑いなく、2020年度からの特定営農型太陽光発電の導入は残念ながらそうした動きを一部後押ししてしまったように思いますし、発電事業のための営農型太陽光発電事業を押し出す企業が大手にも増えつつあるのは大きな懸念です。また、不適切な事例の対応に苦慮する地方自治体の現場から、是正指導や改善のための法的根拠を求める声にも応えていく必要があります。

 今後、営農型太陽光発電の制度を整え直していくに際して、課題となるのは「営農型太陽光発電を何のために活用していくのか」という政策的な方針の不在です。持続可能な農業の達成、農業・農村振興という本来の目的の他、昨年から始まった環境省の脱炭素先行地域事業でも地方自治体の計画に取り入れられるなど、地域・社会の再生可能エネルギー電源としても期待されています。

 4月15日から16日にかけてG7気候・エネルギー・環境大臣会合が開催され、これまで以上の気候変動対策目標を掲げ、温室効果ガスの削減を進める方針がコミュニケ(共同声明)の中で示されています。化石燃料に大きく依存する国内農業のエネルギー転換を進め、脱炭素化を図ると共に、かつて農業・農村が担ってきた社会に食とエネルギーを安定供給していく役割を取り戻していくといった、営農型太陽光発電の普及によって目指して行く未来をまず議論しなければなりません。

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