欧州が先導する蓄電池のサステナビリティ規則、日本の対応策と今後の課題は?日本企業にも影響する「欧州バッテリー規則」への対応が急務に(2/4 ページ)

» 2023年05月02日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

CFP試行事業から得られた知見と今後の対応策

1.原材料調達・生産段階の活動量

 試行事業では、自動車OEMを起点として上流のサプライヤーにCO2排出量算定を依頼し、サプライヤーは事務局を介して情報(部材1単位あたりのCFPのみ)を下流の企業に提供した。

 サプライヤーは、経済産業省から提示された活動量一覧を参考に、活動量(原材料の投入量等)のデータを取得し、これに対応するCO2排出原単位を乗じて、納入している部材のCFPを算出する。

 測定対象とする活動量は、PEFCR(欧州の製品環境フットプリントカテゴリー規則)において限定列挙されている項目に加え、各部材の重量1%以上を構成する材料に係る活動量も原則対象とした。

 一次データの取得対象とした活動量については、試行事業において、概ね一次データの取得が可能であったことが確認されたため、今後もこれを一次データの取得対象とする。

2.流通段階の活動量

 試行事業では、車載用電池パックの製造サイト(工場)から販売拠点までの輸送に係るGHG排出量を算出するにあたり、燃費法、改良トンキロ法、燃料法のいずれかの手法を利用することとした。

表1.輸送に伴うCO2排出量の算出方法 出所:蓄電池のサステナビリティに関する研究会

 輸送重量や輸送距離、輸送手段、積載率など全ての一次データを取得することは事業者の負担が大きい一方、全てのデータについてシナリオを固定すると実態との乖離が大きくなってしまう。

 このため今後の対応策としては、販売台数(電池重量を乗じて輸送重量を算出)や輸送距離は一次データ取得項目として、輸送手段・積載率については簡便化のため、事務局が作成したシナリオを活用可能とする。

3.使用段階の活動量

 電動車の走行のために消費される電力そのものは、電池製造者が直接影響を与えにくいが、充放電ロスは蓄電池の性能に左右される。このため、充放電ロス分のみを使用段階の負荷として、充放電ロス量に電力原単位を乗じることにより、GHG排出量を算出する。

 試行事業では、充放電ロス量の算出にあたり、走行距離基準と電池サイクル基準のいずれかの手法を使用することとした。

表2.充放電ロス量の算出方法 出所:蓄電池のサステナビリティに関する研究会

 試行事業の結果、実測値として充放電ロス率を算出するのは困難であることや、電動車の生涯走行距離を仮定することが難しいことなど、多数の課題が指摘された。このため、現時点においては、「使用段階」はCFP算出の対象外とすることとした。なお欧州バッテリー規則案でも、使用段階はCFP算出から除外されている。

4.使用後処理段階

 車載用電池パックの使用後処理段階については、処理フローの実態が不明瞭であるという課題がある。このため、まず事務局において使用済車載用電池パックの、リユース、無害化・リサイクル、海外輸出等の3つに分類した処理フロー図を作成した。

図4.使用済車載用電池パックの処理フロー 出所:蓄電池のサステナビリティに関する研究会

 また使用後処理段階の計算手法には、欧州PERCRの「CEF(Circular footprint formula)」、WBCSDのGHGプロトコルにおいて提示されている「RCM(Recycled content method)」、「CLAM(Closed loop approximation method)」の3つがある。

 このうちRCMは、自動車OEMや電池メーカーにとってシンプルで使いやすく、原材料調達・製造で再生材を利用する場合に負荷削減効果を反映可能というメリットがあることから、事務局における算定にあたってはRCMが採用された。

 また、車載用蓄電池の使用後処理は製造から10年以上経た後に行われるため、事業者が製造時に予測するのは困難であることから、事務局でシナリオを作成した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.