欧州が先導する蓄電池のサステナビリティ規則、日本の対応策と今後の課題は?日本企業にも影響する「欧州バッテリー規則」への対応が急務に(3/4 ページ)

» 2023年05月02日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

CFPは段階的に要件化へ

 経済産業省では、試行事業から得られた知見等に基づき、「車載用蓄電池のカーボンフットプリント算定方法(案)ver.1.0」を作成し、第4回研究会で公開した。

 今後、より広範囲な事業者を蓄電池のCFP算定に導くためには、導入型補助金の要件への追加や法的措置など、何らかのインセンティブと紐付ける措置も検討が必要とされている。

 まずはCFPの算定を求めること(情報は非公開。経産省に報告のみ)から始め、その次の段階で情報公開を進める等、段階的な要件化を検討する。

図5.車載用蓄電池CFPの段階的な要件化案 出所:蓄電池のサステナビリティに関する研究会

人権・環境DD試行事業の概要

 欧州バッテリー規則案では、環境や人権に配慮した調達を促すため、コバルト、ニッケル、リチウム、黒鉛を対象に、人権・環境面のリスクを評価するプロセス(デュー・ディリジェンス:DD)の実施を事業者に義務付けている。

 このため経産省の試行事業においても、コバルト、ニッケル、リチウム、黒鉛の採掘・精錬・加工プロセスを対象として、「大気、水、土壌、生物多様性、人間の健康、労働衛生・安全、児童労働を含む労働者の権利、人権、地域社会の生活」などのリスクに関するデュー・ディリジェンス(DD)試行事業を行った。

図6.人権・環境DD試行事業の概要 出所:蓄電池のサステナビリティに関する研究会

 DD試行事業では、人権・環境リスクへの対応状況に関する帳票を電池メーカーから1次サプライヤー(正極メーカー、負極メーカー、電解液メーカー等を想定)に送付し、帳票を受領した1次サプライヤーは2次サプライヤーに送付、2次サプライヤーは3次サプライヤーに送付、ということを繰り返し、精錬・製錬事業者まで帳票を届けることした。DD試行事業では、国内外の事業者延べ123社から回答を受領した。

人権・環境DD試行事業の結果

 DD試行事業帳票には74件の質問項目があったが、約7割の事業者が鉱物調達方針を公開し、8割強がリスク特定を実施するなど、DDに関する取組が進んでいることが明らかとなった。

 また、精錬・製錬事業者といった企業は第三者監査の取得率が高く(7割弱)、DD結果の公開率も高い(7割強)など、上流側の企業ほど、対応を進めている傾向がある。

図7.人権・環境DDの実施状況 出所:蓄電池のサステナビリティに関する研究会
表3.人権・環境DD試行事業の回答結果 出所:蓄電池のサステナビリティに関する研究会

 DD試行事業では、実施方法の効率化、確認結果の正確性の担保、サプライチェーン全体の網羅性などに課題があることが明らかとなった。

 今後、第三者認証による正確性担保や、情報プラットフォーム上でのデータ連携等について検討を行う予定である。

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