欧州が先導する蓄電池のサステナビリティ規則、日本の対応策と今後の課題は?日本企業にも影響する「欧州バッテリー規則」への対応が急務に(4/4 ページ)

» 2023年05月02日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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蓄電池に関連する各種データの連携基盤を構築へ

 欧州バッテリー規則案では、鉱物資源の調達情報のトレーサビリティ確保やGHG排出量、リサイクル材の使用割合等のデータを消費者へ提供するため、サプライチェーン全体の情報を共有するデータプラットフォームである「バッテリーパスポート」が創設される予定である。

 また欧州では、自動車産業全体でCFP等のサプライチェーンに関するデータを共有するプラットフォーム「Catena-X」が開始されている。

 データ連携基盤の構築は、蓄電池や自動車に限らない業種横断的な課題であるものの、欧州バッテリー規則等への対応は喫緊の課題であることから、「1.蓄電池のCFP」、「2.蓄電池の人権・環境DD」を先行ユースケースとして、取り組みを推進していくこととしている。

図8.データ連携基盤の先行ユースケース 出所:蓄電池のサステナビリティに関する研究会

 企業をまたいでサプライチェーン上のデータを共有して活用できるようにするため、企業の営業秘密の保持等を実現しながら、拡張性や経済合理性を担保し、データを連携する仕組みについて運用面・技術面から検討が進められている。

データ連携基盤の立ち上げに向けた課題

 蓄電池のCFP等を先行ユースケースとして、新たなデータ連携基盤を立ち上げるには、そのシステムの運用・管理を行う運営主体が必要となる。企業の営業秘密を含んだデータを取り扱う運営主体には、信頼性や中立性が求められる。

 また、先行ユースケースである蓄電池のCFPや人権・環境DDのみならず、自動車全体のCFPやサプライチェーンの高度化といったさまざまなユースケースの実装等を見据え、拡張性のある仕組みとして構築していくことが必要である。

 蓄電池以外の自動車部品にも対象を広げることは、データ連携基盤の運営費用を、より多くの参加者で負担することにつながり、1社当たりの費用負担の抑制にも有効と考えられる。

 さらに、欧州バッテリーパスポートやCatena-Xなどとの相互運用性の確保等、海外とのハーモナイゼーションを進めていくことも重要である。

 また、自動車や蓄電池はグローバルな商品であることから、データ連携基盤のハーモナイゼーションだけでなく、CFP算定方法や人権・環境DD手法そのものについても、海外との連携やハーモナイゼーションが求められる。

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