海外の「水素戦略」の最新動向、投資規模やスピード感の違いが明らかに法制度・規制(3/4 ページ)

» 2023年05月15日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

中国における水素関連産業の動向

 中国は世界最大の再エネ導入国であり、2022年の新規導入量は風力38GW、太陽光87GWと世界全体の導入量の半分弱を占めているが、一部の省では未利用の再エネ(棄風、棄光、棄水)が生じている。

 また現在、中国の水素需要は年間約3,300万トンであり、世界総需要の約3割を占める最大の水素需要国であり、今後も需要の増加が見込まれている。このため、未利用再エネの有効活用や電力需給バランス維持の観点からも、水電解によるグリーン水素の製造・利活用に対して注目が高まっている。

図5.中国の水素需要量(左)と生産量(右)のIEA展望 出典:NEDO北京事務所

 2022年3月、国家発展改革委員会および国家能源局は、「水素エネルギー産業発展の中長期計画」を公表し、2025年までに燃料電池車5万台、グリーン水素製造年間10〜20万トン、等の数値目標を設定した。

 中央政府による数値目標はこれが初めてであるが、主要な地方政府の多くは、産業誘致等の観点から、すでに水素産業の発展に関する計画を相次いで発表している。

 内モンゴル自治区はグリーン水素の年間生産能力を2025年までに50万トンとする計画を発表したほか、同自治区のオルドス市は、グリーン水素の年間生産能力を2025年までに40万トン、2030年までに100万トンとする目標を掲げており、内モンゴル自治区だけで中央政府の目標を上回る規模である。

 また、中国石油(ペトロチャイナ)や国家電投などの国有企業が、水素関連の取組を積極的に推進しており、中国石化(シノペック)は、「西気東送(西部の水素を東部へ輸送)」の一環として、内モンゴルから北京までの400kmを結ぶ長距離純水素輸送パイプラインを建設するプロジェクトを2023年4月に開始した。

 中国国内企業だけでなく、欧米企業も、中国の水素市場の獲得や現地化によるコストダウンを目指し、中国での水素関連事業に積極的に参入している。

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