家庭・中小企業の省エネ促進へ新制度、家電機器にDR機能の搭載などを求める方針に省エネ機器(3/5 ページ)

» 2023年07月07日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

エネルギー消費機器のDR対応

 需要側リソースを活用した「下げDR」や「上げDR」の実施は、電力レジリエンスの強化や再エネ導入拡大の観点から重要である。

 このため省エネ法の改正により、特定事業者は、その定期報告制度においてDR実績を報告することが求められようになった。

 家庭や中小企業では、上げ下げ DR の一件あたりの供出量は小さいが、多数のリソースをアグリゲーションすることにより、大きなDRを供出可能となる。

 例えば家庭用エアコンは、現在市中に約9,000万台が設置されている。この3割が稼働するならば電力需要は合計約1,900万kWに上る。この時、下げDRとして、この10%を運転抑制することにより、約190万kWのネガワットを創出することが可能となる。

 これは、夏季の電力需要15,000万kWの約1%に相当する規模である。

表3.家庭用エアコンによる下げDR規模の試算 出典:ダイキン工業

 同様に一定の仮定を置く場合、店舗用エアコン(約930万台設置)では約430万kW、ビル用マルチエアコン(約190万台設置)では約170万kWの下げDRが可能と試算されている。

 もちろんこれは、制御対象エアコンがすでに通信回線に接続済みであり、外部から電力抑制が可能な状態であることが前提となる。ダイキン工業では、現在のエアコンのIoT接続率は10〜20%程度と推計している。また、空調機をDRリソースとして活用する際には、利用者の快適性や健康(夏季の熱中症リスク)に影響を及ぼすおそれがあることを考慮する必要がある。

 ダイキン工業によれば、家庭用エアコン(標準機)においてDR対応した場合、機器コストは3〜5%程度増加するとのことであるが、今後販売する機器はDR機能の標準搭載を推進することが意思表明されている。

 また家庭用ヒートポンプ給湯機(エコキュート)は、市中に約500万台が設置されている。現在、エコキュートの大半は深夜早朝に沸き上げているが、これを太陽光発電の余剰電力が生じる昼間に変更することにより、上げDRを実施可能となる(1台1kW、50万台を活用と仮定すると、50万kW程度)。

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