家庭・中小企業の省エネ促進へ新制度、家電機器にDR機能の搭載などを求める方針に省エネ機器(1/5 ページ)

家庭・中小企業のさらなる省エネ・脱炭素化に向けて、資源エネルギー庁では非化石エネルギーへの転換や、デマンドレスポンスなどへの対応を促す新制度を設置する方針だ。現時点で議論されてる新制度のポイントについてまとめた。

» 2023年07月07日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 昨年来のエネルギー価格の高騰やカーボンニュートラル要請の高まりを受け、世界全体で省エネのさらなる深掘りや再エネ導入の加速化が進められている。

 我が国では、2022年に省エネ法が改正され、従来の「エネルギーの使用の合理化(省エネ)」だけでなく、「非化石エネルギーへの転換」や「電気の需要の最適化」に関する措置が、法の目的に新たに加えられた。

 これまで省エネ法では、主に大規模な事業者(エネルギー使用量1,500kl/年以上の「特定事業者」等)に対する直接規制によって大きな成果を上げてきたが、家庭や中小企業等に対しては、家電製品等トップランナー制度や情報提供などの間接的な手法が用いられてきた。

図1.日本の最終エネルギー消費における省エネ法の未カバー率(2020年) 出典:省エネルギー小委員会

 資源エネルギー庁の省エネルギー小委員会では、家庭や中小企業に対する省エネ・非化石転換・デマンドレスポンス(DR)の取り組み強化に向けた検討を行い、その第42回会合において、中間論点整理が取りまとめられた。

家庭部門での排出削減の取組

 「地球温暖化対策計画」において、家庭部門の2030年排出削減目標は▲66%(2013年度比)であり、主要分野で最も高い削減率が求められている。2030年目標、さらにその先のカーボンニュートラル実現には、エネルギー供給側のみならず、需要側における省エネ・非化石エネルギーへの転換を進めていくことが重要である。

表1.地球温暖化対策計画 部門別削減目標 出典:地球温暖化対策計画

 このアプローチの一つが、エネルギー消費機器の非化石エネルギー転換である。現在、家庭(全国平均)では、給湯や暖房によるエネルギー消費量が5割強を占めており、これら熱利用機器の省エネ化・非化石化が重要であるが、地域や住居形態により、機器の普及状況は大きく異なる。

図2.地域別・住居形態別 家庭用給湯器出荷台数推移 出典:省エネルギー小委員会

 ヒートポンプ式給湯器は国内外において、省エネと電化(非化石電力を前提とした脱炭素化)技術として期待されているが、寒冷地ではエネルギー消費効率が低下することや、集合住宅や都市部の狭小戸建住宅では貯湯槽の設置に必要な空間の制約が大きいことが、普及の課題となっている。

 またガス給湯器では、高効率な潜熱回収型の機器の普及のほか、エネルギー供給側では合成メタンや水素の注入によるガスそのものの脱炭素化が進められている。合成メタンや水素は現在の都市ガスとは熱量や成分が異なることから、これに対応する新たな給湯機の開発が進められている。

 これまで、ヒートポンプ式給湯器やガス給湯器等は、トップランナー制度によって省エネ基準の設定とその達成を求めてきた。

 今後は、トップランナー制度を参考として、メーカー等に対して、目標年までに一定の非化石エネルギー比率の達成や、デマンドレスポンスに対応する「DR Ready機能」の具備を求める仕組みを検討することとした。

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